2013年3月16日土曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 4

韓国の情報活動家が、Corporate Europe Observatoryによる「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者が投資仲裁ブームをあおりたてる方法(Profiting from injustice. How law firms, arbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」という報告書の内容を韓国語に翻訳して「投資仲裁産業」の主な行為者としてローファーム(仲裁専門弁護士)、仲裁者、金融資本(第三者ファンド)が国際投資体制をいかに維持し、拡大させるかを4編に分けて掲載した記事の日本語訳。原文とは若干違う部分もあり、重訳なので翻訳時のミスもあるかもしれません。報告書の1編2編3編の記事、また必要なら原文もご覧ください。

不当なことで利益を得る(4)

投機金融資本にとってのISDとは?

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/ 2013年3月11日、10:49 AM

賭博場の掛け金を掛ける者、第三者ファンド

投資仲裁システムは、ますます投機性金融世界と統合されている。第1編で述べたように、国際投資仲裁は政府と投資家ともに高額な費用を要求する。最近はその費用を第三者ファンドから調達する現象が増えている。

第三者ファンド(third party funding)は、ローファームや訴訟の当事者が訴訟ファンド会社から訴訟費用を用意する過程やメカニズムをいう。つまり第三者ファンドは訴訟費用の提供者だ。一般に、第三者ファンドが訴訟の費用を提供した後、訴訟当事者が再判決と損害賠償金を受ければその損害賠償金の一定の割合を得て、裁判で負ければ何も受け取れない。つまり訴訟で負ければ第三者ファンドは何も受け取れずに投資した金を失う。第三者ファンドは、本質的に賭けだ。仲裁過程の費用を返してもらえる保険契約とは異なる。

第三者ファンドはよく知られていないが、Burford Capital(米国)、Juridica(英国)、Omni Bridgeway(オランダ)といった会社が、国際投資仲裁で指定席を得つつある。銀行、ヘッジファンド、保険会社も国際的な紛争に投資をする。請求人と第三者ファンドの間で、互いにショッピングができるように仲介するブローカーと電子市場がますます大きくなっている。

国際投資仲裁で第三者ファンドが急速に増加した最も明白な理由は高額な費用だ。そのために投資家は仲裁申請を躊躇し、それほどの金を持っていないこともあり、長い間、高い費用を払い続けると資産が使えないこともある。

また第三者ファンドが最近増加しているのは、国際的な経済危機にも起因する。投資家は相変らず経済危機の効果を体感し、仲裁過程であまり危険な投資をしないという。二番目の理由は仲裁の結果の不確実性だ。投資家は訴訟で負ける危険を第三者ファンドに移転し、その危険の管理を転嫁することを望む。

最後に、国際投資仲裁の増加と主な仲裁判定の公開により、可能な結果をさらに簡単に予測できるようになったため、若干、不明確性が減少している。

こう喩えるとわかりやすいだろう。掛け金がなければ博打はできない。その上、経済事情があまり良くなければなおさらだ。しかし誰かが掛金をくれる。博打で金が取れば掛け金をくれた人に少し払い戻せばよく、掛け金をすべて失っても返さなくても良い。だが、掛け金を賭けた人にとっても悪くないのは、これまでの傾向を見れば、その賭博場は自分が金を出してやったギャンブラーに有利なイカサマをする博打だったということだ。

国際金融危機で、むしろ常勝疾走

2008年、ウォールストリートのサブプライムローン事態の時に第三者ファンドはむしろ急浮上した。ローファーム、Patton Boggsのパートナー弁護士で第三者ファンド会社のJuridicaとBurfordのコンサルタントもしているJames Tyrrelは、不況の中で主張した。「適当なところを探している多くの金がある」。それで、世界が無謀な出資と信用不渡り、スワップの超過で揺れ動いている間、第三者ファンドは賭けを張る新しい現金流入先を得た。

2007年、Juridicaはロンドン証券取引所を通じ、初期株式公募に1億2千万ドル(8千万ユーロ)を集め、2008年末に国際的な不況が最高潮になった時、1億1600万ドル(7440万ユーロ)を追加で集めた。アイオワ大学のMaya Steinitzは、第三者ファンドの拡張は「ファンドと弁護士が弁護士協会の懲戒範囲の外で活発に行えるように、専門的な規制が実質的になかったため」と評価した。実際に第三者ファンドは「法的荒野(legal no-mans land)」と呼ばれた。

第三者ファンドはどれほどの金を稼ぐのだろうか? 第三者ファンドが受け取る分け前を計算する方法には、初期投資金に何倍か掛け算をする方法もあり、最終賠償金の一定比率を受け取る方法もある。その割合は15%から50%まで多様だ。 最後に、上の2種類の方法を混合する方法がある。最終判決前に合意した場合も第三者ファンドは似た方式で収益を得る。

第三者ファンドの収益は、衝撃的な割合で増加した。Burfordの年次報告書(2011)によれば、2011年度の利益は1590万ドルで、前年比965%増加した。 Burfordが金を出した訴訟のうち9件が2011年に終わったが、期待純益は最低3200万ドルだという。この9件の訴訟に3500万ドルを払ったので、掛け金100円あたり、91円を取ったわけだ。

Burfordは固定投資金として3億ドルを保有しており、1件の投資当りの平均投入額は800万ドルだ。2009年に創立して以来、2011年末までに2億8200万ドルを投資した。Juridicaの年次報告書(2011)によれば、2011年度の利益は1290万ドルで、前年比578%増加した。Juridicaは固定投資金として2億ドルを保有しており、1件の投資当り平均750万ドルを投入する。

何を売るのか?

第三者ファンドがどんな訴訟に金を出すのかを決める方法論については、よくわからない。第三者ファンドの慣行についても明確に知られていない。訴訟請求人と第三者ファンドの間で、どのような内容で第三者ファンド協定を結ぶのかもよくわからない。

だが明らかなことは、第三者ファンドは利益を極大化するために、絶えず新しい商品を開発していることだ。

第三者ファンドは投資家(企業)だけでなく、政府を含む被告のための商品も開発している。Fulbrook Management会長のSelvyn Siedelは、「しばしば、われわれは訴訟をあおっていると非難される。しかし現在、われわれは紛争の双方で働いていると言える」と主張する。

国際投資仲裁件ではないが、シェブロンとエクアドルの訴訟を例にあげよう。 1964年〜1992年にテキサコ(シェブロンが買収)がエクアドルで原油の採掘で水を汚染させ、ガン、障害児出生、小児白血病増加が現れるなど、先住民の健康が悪化した。


シェブロンに抗議する市民

シェブロンに抗議する先住民:www.chevroninecuador.com/201006_01_archive.htmlより

http://okosmos.blogspot.kr/2011/02/ecuadorian-judge-hits-chevron-with-86bn.htmlより

先住民がシェブロンを相手としてエクアドル裁判所に損害賠償請求をした。 Burfordは、2010年11月にエクアドル先住民の代わりに、訴訟資金として400万ドルを出し、1500万ドルまで投資することにした。Burfordのファンド協定によれば、Burfordが1500万ドルを出し、原告が10億ドルの賠償を受け取れば、Burfordは5500万ドルを受け取り、原告が20億ドルの賠償を受け取れば2倍の1億1100万ドルを受け取ることにした。これで終わりではない。原告が10億ドル未満(最低6950万ドルまで)の賠償判決を受けた場合、Burfordは同じように5500万ドルを受け取ることにした。つまり6950万ドルの賠償判決があれば、Burfordは5500万ドルを受ける。

これは賠償金の80%だ。残りの20%は金を払った他のファンドに行くので、先住民が取る金はない。できるだけ多くの賠償金を取れなければ、ほとんど先住民に残らない。

2011年にエクアドルの裁判所は、シェブロンに86億ドルを賠償するよう判決したが、これを受け取れるかどうかはわからない。シェブロンは繰り返し控訴すると同時に、ISDも申請をした。Burfordは最近、この訴訟についての契約を他のファンドに売ったという。

ある第三者ファンドは仲裁の戦略と運営について、さらに大きな影響を及ぼす「より少なく消極的なビジネスモデル」を開発している。オランダの第三者ファンドのOmni Bridgewayは、専門家の証人選択と真相調査任務を含む「オーダーメード・コンサルティング」をしており、仲裁の過程で「単なる金ではなく技量を倍加」させるサービスを提供したいという。

また、Selvyn Seidelは「われわれはまた、請求人と弁護士の能力を倍加させる支援サービスの提供を始めた。われわれは自らを弁護士、金融業者、銀行家、会計監察官の統合的なグループだと考えたい」と話した。

その上、第三者ファンドは派生商品も開発している。Selvyn Siedelは「私たちが考えている別の商品がある。訴訟全体より訴訟の一部に資金を出し、ミニ・ポートフォリオのように5〜6件の訴訟に分散投資する派生商品だ。訴訟に資金を出した後に、信用不渡りスワップ(credit default swaps)のように、第三者にそれを転売できる可能性もある」とその輪郭を示した。投機金融資本はよくわからず、Selvyn Siedelの話はよくわからないが、第三者ファンドがますます投機性が大きい方向に進むことは明らかだろう。

第三者ファンドに隷属する仲裁過程

無法天下の第三者ファンドへの規制が必要だという批判が提起されている。全米商工会議所は、金儲けに血眼になっているこうした投資会社が訴訟に不適切な影響を及ぼすと批判した。Burfordの最高経営者のChristopher P. Bogartは、仲裁過程に影響を及ぼす意図ななく資本を提供する消極的な投資家だと言うが、そうではない。

仲裁請求人(投資家)は、自分の利害関係を管理しなければならないだけでなく、第三者ファンドの利害関係もまた管理しなければならない。仲裁請求人の弁護士には、自分の受託料を払う第三者ファンドの影響を受けかねないという恐怖がある。したがって、第三者ファンド協定のために、仲裁手続きが第三者ファンドと投資家間の関係に隷属しかねない。

ところで、第三者ファンドと投資家と弁護士の関係は、第三者ファンド協定上の契約的関係より、はるかに重なっているようだ。第2編と第3編でローファームと仲裁者の緊密な関係に言及したように、第三者ファンドも投資仲裁コミュニティの「門番」として、国際仲裁システムに重要な影響を及ぼす。第三者ファンドはコンサルティングを行い、代案を提示して、ローファームをリードしたり、誰が仲裁者で選任されるのかについても影響を及ぼす。

第三者ファンドと仲裁者、弁護士、投資家(企業)をつなぐ対人関係の網を形成しているCalunius CapitalのMick Smithの例を見よう。

Smithは現在、Calunius Capitalの会長だ。その前はローファームFreshfieldsで働いていた。彼は「そこで結んだ関係は相変らず重要で、彼らは私の第1の寄港地だ」と話したように、彼が元の同僚と親密な関係を維持したことから利益を得ている。

Rusoroがベネズエラ政府にISDを提起するためにファンドを探していた時、Caluniusはカードをつかんだ。Rusoroはカナダに本社をおくロシア資本の鉱業会社だ。2011年8月17日、ベネズエラのチャベス大統領が金鉱山の探査と開発を国有化すると発表した後、同年9月に金産業を国有化する法律が公布された。 Rusoroは、資産の移管および補償についての協議を始めたが、うまくいかず、2012年4月に操業を完全に中断した。

2012年7月にRusoroは、カナダ・ベネズエラ二国間協定を根拠としてICSID(国際投資紛争解決センター)に仲裁申請をした。ローファームのFreshfieldsがRusoroを代理し、Calunius CapitalがRusoroの仲裁費用を提供することになった。

Smithのケースは例外ではない。2011年に創立した訴訟ファンド会社のBlackRobe CapitalとFulbrook Managementは、どちらも元弁護士が運営する。 現在の、Fulbook Managementの会長でBurford Capitalの共同創立者であり、Latham&Watkinsのパートナー弁護士だったSelvyn Seidelの履歴からわかるように、仲裁専門弁護士と会社は強い関係を維持している。彼はそうした関係が「私たちに大きな助力をしてくれたし、われわれは国際仲裁を助けることで彼らに寄与することを望む」と話した。

現在BlackRobe Capitalの共同創業者で、その前はBernstein Litowitzのパートナー弁護士だったJohn P. Coffeyは、「私の元の同僚たちから投資機会が殺到した」、「普通、トップ25のローファームから要請がくる」と話した。 Burfordも主要ローファームと企業での訴訟管理経験がある人々で構成されていると自己紹介している。こうした閉じたネットワークは、仲裁者の能力、仲裁手続きの公正性と透明性において、疑問がある。実際にあるファンドとローファームは、部分的に、あるいは全体的に同じ側に属している。

これだけでなく、第三者ファンドと投資家間の関係によって、紛争の過程が延長、または短縮され、仲裁の過程に否定的に影響を及ぼすことがある。こうした例はS&T oilとルーマニアのISDで見られた。第三者ファンドのJuridicaが払っていたS&T oilの費用を中断したことで、ISD仲裁手続きが続けられなくなった。結局は、Juridicaが金を払い、さらに2年間の仲裁手続きが進められた。 ルーマニア政府としては、2年間の仲裁費用をさらに押し付けられた形だ。

軽率な仲裁申請が増加

二つ目の批判は、第三者ファンドが国際投資仲裁の数を増やすことができるという点だ。全米商工会議所が雇った弁護士のJohn H. Beisnerは、第三者ファンドが軽率な訴訟を奨励すると昨年に下院で述べた。オーストラリアの場合、全般的に第三者ファンドを自由化した後、訴訟が16.5%増加したと推測されている。

掛け金がなければ賭けはできないが、第三者ファンドが掛け金を払うことで、潜在的に投資紛争の数が増える。さらに軽率で危険が大きい訴訟になるほど、第三者ファンドのポートフォリオ投資の価値を上げることになる。「損失の恐怖への危険から逃げれば、ポートフォリオの潜在的なパフォーマンス(積極的に投資し、短期間に最大の収益を追求する投資)を極大化させることはできない」とBurfordグループが指摘したようにである。

われわれの選択は?

報告書「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者が投資仲裁ブームをあおる方法(Profiting from injustice. How law firms, arbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」の内容を翻訳し、「投資仲裁産業」の主要行為者としてのローファーム(仲裁専門弁護士)、仲裁者、金融資本(第三者ファンド)が国際投資体制をどのように維持し、拡大するかを4編にわたり伝えた。

そしてこの報告書は、最後に仲裁手続き内外で私たちが選択できるいくつかの方法を提示しているが、紹介しないことにしよう。世界が仲裁機構によるキャッシュディスペンサーのように扱われ、仲裁判定の結果が国際的に執行される世界に対し、どんな選択ができるのかは私たちが考えるべき部分なので、いくつかの国での努力を紹介して文を終えよう。

今年1月、インド政府は二国間投資保護協定に関するすべての交渉を保留することにした。昨年、企業が投資協定によるISDの通知が頻発したため、将来、さらに多くのISDが乱発されかねないという恐れを感じた財政部と商工部が、投資協定モデルを再検討するまで、すべての投資協定を保留することにしたのだ。

2011年の春にはオーストラリア政府は、今後、これ以上の貿易協定にISDを入れないと発表した。

ISD爆弾を受けた南米は、もっと積極的な代案を模索している。ボリビアは2007年に、エクアドルは2009年に、ベネズエラは2012年1月に、国際投資紛争解決センター(ICSID)から脱退した。

そして南米国家連合(UNASUR. 2008年に発足した南米国家共同体. ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラ、スリナム、アルゼンチン、ガイアナが参加)は、代案的な仲裁機構についての議論をしている。

2009年6月にエクアドルは、ICSIDを代替する代案的な仲裁センターの創設を提案し、2010年12月にUNASUR会員国の外務部長官が仲裁センター紛争解決システムの作業班の議長として、全員一致でエクアドルに決めた。エクアドルは仲裁センターの規則についての提案書を提出し、UNASUR紛争解決システム委員会はその提案を調整しており、今後、会員国が検討することになる。

UNASURの12の会員国のうち9か国が受けたISDは、ICSIDに提起されたものだけでも111件になる。これはICSIDの仲裁全体の31%を占めている。

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