2014年4月20日日曜日

セウォル号


大惨事になってしまった韓国のセウォル号。救助作業は遅々として進まず、時間だけが無駄に流れ、家族の焦りはつのるばかり。まだ事故の全体像は明らかになっていないが、漠然としたものが見えてくるにつれて、何だか暗澹たる気分が強まる。
この事故の背景には、技術的な問題、安全管理の問題、そして救助システムの問題がある。


事故のきっかけは濃霧で出発が遅れたこと。この遅れを取り返すために通常の航路ではなく、危険な近道をしたらしい。
最大の難所で、理由はわからないが何かがあって、(1)無理な急旋回をした。
この時に積み荷が崩れ、船全体がバランスを崩したのだが、(2)過積載で船の重心が高くなっていたか、(3)固定が不十分だった可能性があるという。
しかし普通ならそう簡単に船がひっくり返るものではない。ところがこの船は、船体の安定維持のための(4)バラストタンクと(5)スタビライザーに問題があり、船員は修理を要求していたのに部品の調達が難しいなどの理由で(6)適切な修理が行われていなかった。
もしかすると、(1)の急旋回は、(2)から(5)までの要因のどれか、あるいはこれらが重なり、実際の操舵角度以上に舵が効くオーバーステア状態になってしまっていた結果かもしれない。
さらに、当時操船の責任者はこの海域を航行するのは初めてだったという。ベテランでも難しい海域に、姿勢制御システムに問題がある船を経験の浅い航海士に操船させた船長の責任もある。

船長といえば、今回の事故は船長の責任は重大だ。船が傾き、危険な状態になった時の(7)船長の対応は、(8)安全マニュアルに違反するまったく不適切なものだった。危険になった時に全員甲板に出るように案内すべきだったという。安全な誘導ができなかった理由として、(9)安全教育や訓練、安全対策の不足などの理由が指摘されている。避難誘導がきちんとできていれば、全員助かったかもしれないという。

(4/21追記)伝えられるところによると、船長は救助艇が到着していない状態で傾いた甲板に出ると海に転落する可能性があり、潮流が早く水温が低い海に投げ出されると危険だと判断した可能性があるという。救助艇到着後、避難するよう放送するように指示した、または指示しようとしたと言われるが実際には放送は行われていない。(追記終わり)

船体が完全に傾き、救助活動が始まった時点での問題もある。
外に出てきた人たちの救助はうまくいったのだけど、船内に閉じ込められた人の救助ができなかった。最初の数時間は本当に貴重な時間で、この時間に適切な救助活動ができていればずいぶん救えたと思うのだが。
転覆してしまった後のことについては、(10)危機管理システムの不在ということに尽きる。対策本部が2つもあったり、未確認の情報が飛び交ったり、対策本部が誤報を連発したり、ここにマスコミの低俗な報道や名前を売りたい政治家が登場したり、もうめちゃくちゃ。
民間の優秀なダイバーが集まっているのに、せっかくの装備や人材を指揮する人がいないどころか、民間の活動を邪魔しさえしているという。日本や米国が支援提供の意思を示しているのに、この混乱状態ではとても外国の支援を要請できる状態ではない。

事故から5日。水に濡れない空間があれば、生存者がいる可能性はまだ皆無ではない。最善を尽くしてほしいと思う。


(追記 4/22に 関連記事 を追加しました。)

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