そんなある日、韓国の友人が「それなら自分で焙煎すればいい」という。簡単だから、というので、それじゃ、とばかりにコーヒー屋で金網の焙煎器を買ってきて自分で焙煎してみたら、ホントにそこそこ満足できてしまう。高級な豆屋で高い値段の豆を買わなくても、自分が必要な時に好みの味のコーヒーが飲める。少なくとも、それ以来、ぼくはコーヒーは自分で焙煎するようになった。
最初のうちはいわゆる「手網焙煎」というやつでやっていたのだけど、ネットでミルク缶を使って焙煎器を作る方法を見つけた。なかなか良さそうだったのでミルク缶と同じようなサイズのリッツ缶を使ってやってみたところ、具合がよろしい。手網よりいい感じに焙煎できる…のだけど、使っているうちに音がうるさいとか、自宅のガスレンジの温度検知器が作動して火が小さくなるとか、熱量が足りないとか、それなりに不満も感じるようになった。
そんなわけで、ミルク缶ロースターを自分なりに改良して作ったのがこのリッツ缶ロースター。
なぜリッツ缶かというと、別に意味はない。ミルク缶でもいいと思う。知人から災害用保存食として備蓄しているリッツの空き缶で、捨てるはずのものをもらってきたというだけの話なんだが。
オリジナルのミルク缶ロースターとの違いは、穴を大きくしてより多くの熱を取り入れられるようにしたこと、穴を大きくしたことで豆が落ちないように缶の内部に金網を入れたこと、熱が逃げないように蓋を作ったこと、取っ手の工作を簡素化したこと。
雰囲気としては、缶の中に手網を入れたというような感じで、均一に熱を加えられないという手網焙煎の難しいところを解消することができる。金網のクッションがあるのでオリジナルのミルク缶ロースターより音が静か。蓋をつけたことで熱が逃げないようになり、煙が出てきたら取り外せるので煙臭くもならない。
そんなわけで、扱いやすくて浅煎りでもムラになりにくく、深煎りでもすっきりした感じに煎り上げることができるという、なかなか具合のいい焙煎器なのだ。
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これまで使っていたリッツ缶ロースター |
最初にこのロースターを作ったのはもう5年以上前。オリジナルのミルク缶ロースターは柄の工作がちょっとめんどくさいのだけど、100円ショップの安物のポテトマッシャーで柄を作って針金で縛り付けてみた。これで外れないかと、なんとなく不安だったのだけど、5年間使い続けても全然問題ない。たぶん、まだ当分は使える。
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中はこんな感じ |
というわけで、新しく作る必要もないのだが、もう少しコーヒー豆に熱をかけたいような気がして、底面の穴を多くしたバージョンを作ってみた。
新しいロースターの穴の総面積は最初のリッツ缶ロースターの倍以上になっているので、それだけ多くの熱を内部に取り込むことができる。
それと、「コーヒーの焙煎器の作り方を教えろ」というリクエストがあったので、新しいやつを作って、ブログにまとめてみることにしたという次第。材料さえ揃えれば、数時間で完成する。
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材料は空き缶と100円ショップで買った雑貨など |
なお、リッツの空き缶ではなくても、直径13センチぐらい、容量が2リットルぐらいのスチール缶であれば何でも使える。
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穴開けに使う型紙 |
別に型紙なんか作らなくても適当に穴を開ければよさそうなもんだけど、あまり穴の位置が不揃いだとアレなので、適当なグラフィックソフトで穴のバターンを作って印刷し、これを型紙にする。
穴の配置はもちろん自由だが、今回は一般的なハニカム状の配置にすることにした。ちなみに最初のバージョンでは放射状だったのだが、放射状だとどうしても周辺部が疎になってしまう。
自分で型紙を作るのがめんどくさい人は、ぼくが作ったファイルを使ってください。ハニカムパターン(PDF) ラジアルパターン(PDF)
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底面に合わせて切りテープでとめる |
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釘で穴を開ける |
というわけで、ちょっとひと手間かかるけど、型紙に合わせて釘で小さな穴を開けよう。
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こんな感じになる |
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ドリルなどで穴を広げる |
もしドリルを持っていなければ、太いドライバーなど、ある程度の太さの金属棒を金槌で打ち込んで穴を広げればいい。太いドライバーがなければ、五寸釘を使ってもいいけど、その場合、穴の開口面積が小さくなるので穴の数を増やす。
ちなみに、今回開けた穴の大きさは直径7ミリ。穴の数は85個。
穴の大きさはどれだけ熱を内部に取り込むかに関係するので、たぶん厳密にやれば最適な数と大きさというのはあるんだろう。しかしそこまで考えなくてもおいしく焙煎できてるので、直径2ミリから8ミリぐらい、適当でいいんじゃない?
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内部に入れる金網 |
このままではわずかに大きくて缶の中に入らないので、縁の金属枠をはずさなければならない。
うまく枠を縮めることができれば、そうしたいところではあるのだが。
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縁を取る |
金属板の端の部分から、ペンチで縁の接合部を緩めていく。
作業中に金属板の縁で手を切らないように、できれば軍手などをして作業するといいだろう。
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かしめられている金属枠を取る |
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縁を取るとこんな感じになる |
日曜大工センターあたりにいけば、これぐらいのメッシュの金網を売ってるかもしれない。もし金網だけが手に入れば、枠を外す作業をせず、金網を金属用の鋏などで丸くカットすればそちらの方が楽かもしれないとも思う。
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缶に合わせて形を整える |
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缶の壁面との間に隙間ができないようにセット |
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針金でとめる |
がっちり固定しなくても、がさがさ動かないように軽く止めるだけでかまわない。
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がっちり固定する必要はない |
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安物のポテトマッシャーで柄を作る |
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缶の曲面に合わせて曲げる |
なにしろ安物なので、手で簡単に曲げることができる。
こんなマッシャーでポテトをマッシュしたら、すぐプレートがぐにゃぐにゃになっちゃうんじゃないかと思うけど、別にこれでポテトをマッシュするわけではないので気にしない。
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曲面にフィットするように |
今回使った針金は#18という規格のもので、直径1.2ミリぐらいの太さ。
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針金でしっかり止める |
針金をきっちりねじり上げて、缶を振っても柄がずれないようにしっかりと止めること。
最初は針金だけで大丈夫かなと思ったのだが、5年使っても不具合がないので、今回も針金だけで止める。心配なら爪を立てたりビスかリベットで止めればいいんだろうけど。
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熱が伝わらないように取っ手に布を巻く |
この作業がめんどくさければ、布を巻かなくても軍手などで持てば全然熱くない。
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金属部分に巻きつける |
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使い捨てアルミ容器に穴を開けて蓋にする |
蓋も、絶対に必要というわけではない。蓋なんかつけずに焙煎してもそれなりに焙煎できるし、蓋の効果や使い方はちょっと難しい部分もあるので、ある程度慣れてから蓋を作ってもいいかもしれない。
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ぴったりはまるように取り付けて完成 |
この時、蓋の部分に穴を開けておく。穴の大きさは直径2センチから5センチ程度。
この穴は熱せられた空気や焙煎中の煙が抜けるようにするために必要で、あまり小さいと空気が抜けず、大きすぎると熱が逃げる。
つまり豆に加わる熱をコントロールするためのもので、火の強さとともに焙煎の進み具合を決める、ということになる。穴の大きさが違う蓋をいくつか作って、焙煎の進行とともに蓋を付け替えるなんてことをやってみるのもマニアックで面白いかも。でも、はっきり言って、そこまでマニアックにやらなくても、普通においしく焙煎できる。
以上で空き缶を使った簡易ロースターは完成。
これにコーヒーの生豆(100グラム程度から最大200グラム程度)を入れてガスレンジの強火で炙ってやればよろしい。ただし、焙煎中は均一に加熱されるように常に缶を振ってなければいけない。一生懸命振れば振るほどうまく熱が回るんだけど、あまり頑張ると疲れるのでそのへんは適当に。
火にかけたらだいたい8分〜10分ぐらいで1ハゼが来たら火を中火ぐらいに落として豆の色を見ながらザルなどにあけて冷ませばよろしい。
蓋を使う場合は、最初は蓋を付けずに1分ほど加熱したら、蓋をつけて加熱を続け、煙が上がってきたら蓋は取ってしまう。蓋を付けたまま最後まで焙煎すると、煙臭いコーヒーになってしまう。
いずれ、このロースターでコーヒーを焙煎する方法について書いてみようと思ってはいるけれど、今日のところはこのへんで。
(付記: コーヒー焙煎初心者のために 焙煎の説明とりあえず編 を書きました。興味はあるけど焙煎については何もわからないという方は参考にしてください)
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