2015年7月15日水曜日

直火式エスプレッソでおいしいコーヒーを

小さなカップに入った濃厚で香り高いエスプレッソ。「エスプレッソ」というと、カフェに置かれている大きな機械を使わないと飲めないと思っている人も多いのではないでしょうか。しかしヨーロッパの家庭でよく使われているマキネッタ(ビアレッティ社のモカ・エキスプレスという商品が有名で、これは「モカ・ポット」とも呼ばれています)があれば、家庭でも手軽においしいエスプレッソを飲むことができます。
私もいろいろな機会にマキネッタで淹れたコーヒーを他人にふるまうことがあるのですが、後になって「このあいだのコーヒーがおいしかったので、マキネッタを買って自分でも淹れてみたけど、あの時の味が出ない。どうすればおいしく淹れられるのか」と聞かれたりします。マキネッタの使い方は、インターネットでもいろいろなサイトで紹介されているとおりですし、決して難しい技術が必要とされるわけでもありません。しかし、あちこちで見かける説明は、マキネッタでコーヒーを淹れる時に気をつけるべきいくつか大事なポイントが書かれていないものがほとんどです。おかげで残念なことに「マキネッタのコーヒーはおいしくない」と思い込んでいる人も少なくないようです。

モカ・エキスプレス1カップ用
マキネッタ。ビアレッティ社のモカ・エキスプレス1cpu用。
エスプレッソが好きという人の中には、「マキネッタで淹れたエスプレッソなんてエスプレッソじゃない」という人もいます。確かに機械式のエスプレッソ・メーカーで上手に淹れたエスプレッソはおいしいのですが、マキネッタで淹れたエスプレッソにはマキネッタならではの独特のおいしさがあります。
高級なエスプレッソ・マシンで上手に淹れたすっきり洗練されたエスプレッソと較べれば、マキネッタのエスプレッソはちょっと野暮ったい素朴な味と言えるかもしれません。ぶっきらぼうだけど、ホッとするような味。本当かどうかイタリア人に聞いたことはありませんが(いつか聞いてみたいものです)、マキネッタのコーヒーは「ママのコーヒーの味」だといいます。日本で言えば、高級料亭の上品な味噌汁と家庭で作るいつもの味噌汁の違いのようなものとでも言えばいいでしょうか。
私も家庭用の小型のエスプレッソ・マシンを持っていますが、マキネッタもよく使います。その日の気分に応じてエスプレッソ・マシンでコーヒーを淹れたり、マキネッタで淹れたりしておいしいコーヒーを楽しんでいます。「マキネッタのコーヒーはおいしくない」という人は、あるいはマキネッタの使い方が間違っているのかもしれません。
というわけで、マキネッタの使い方、マキネッタでコーヒーを淹れる時のポイントを紹介しましょう。
ちなみに、ここでの説明は私のやり方の説明で、必ずしも一般的ではない部分もあります。また人によっては違う方法で淹れる人もいるでしょう。一応、一般的な使い方についても触れておきますが、どんな方法でも結果としておいしいコーヒーが飲めれば結果オーライ、うまくマキネッタが使えるようになったらそれぞれ自分なりの工夫をしてみてください。そして「こうするといい」という方法を見つけたら、ぜひ教えてください。

マキネッタの選び方

これからマキネッタを買うという人は、数ある製品の中からどれを選べばいいのかで悩むと思います。
私も最初は「大は小を兼ねる」の精神で2~3カップ用の製品を買いました。ところが、これでは自分1人で飲む1杯分のコーヒーには不向きです。ちょっとした裏ワザを使って2~3カップ用で1カップ分のコーヒーを淹れることもできますが、1人で飲むのでしたら1カップ用を買ってください。1カップ用のマキネッタは、事実上、モカ・エキスプレスという製品(冒頭の写真の製品)しかないと思います。
2~3カップ用以上になると、いろいろな製品が選べます。ビアレッティ社の製品の中でも、スタンダードなモカ・エキスプレス以外にも、ブリッカというクレマが浮いたエスプレッソを淹れられる製品や、ムッカというカプチーノが作れる製品、さらにさまざまなデザインの製品や、ボディがステンレスの製品、加熱用の電気ヒーターが付いた製品など、いろいろな製品がありますが、基本的にはどれでも同じです。迷うようなら、モカ・エキスプレスを選んでおけば失敗はありません。
買う時のポイントは、淹れるカップ数に応じたサイズのものを撰ぶということです。私も1カップ用、2~3カップ用、4~6カップ用の3種類を持っています。

豆の選び方

おいしいコーヒーを飲むためにとても重要なファクターが、コーヒー豆です。どんな器具を使っても、そもそもダメなコーヒー豆でおいしいコーヒーを飲むことはできません。
マキネッタのための特別なコーヒー豆というのはありませんが、スーパーマーケットの棚に袋詰されて並んでいるようなコーヒー豆ではマキネッタを使おうが、ペーパードリップで淹れようが、それなりの味のコーヒーにしかなりません。まずおいしい豆を選びます。
もっとも、「おいしい豆」を選ぶのは簡単なようで難しいものです。「おいしい」と評判の店で買ってきたコーヒー豆を使えばおいしいコーヒーになるかというとそうでもありません。一番簡単な選び方は新鮮な豆を選ぶことです。マキネッタに限りませんが、コーヒーの味を決めるのは豆の鮮度です。どんな上等なコーヒー豆でも、焙煎した直後の豆ならおいしいコーヒーになります。しかし焙煎してから何ヶ月も経ったような豆では味も香りも失われた最初から出がらしのような味になってしまいます。ひどい場合は豆が酸化していて、飲むと胸焼けがするようなものもあります。
なお「新鮮な豆」とは焙煎した日から3日以内ぐらいが目安です。マキネッタで淹れるコーヒーは、焙煎後2週間ぐらいまでの豆ならおいしく飲めます。焙煎直後から5日間ぐらいは、毎日コーヒーの風味が変わるのですが、3日目から5日目ぐらいがおいしさのピークだと言われています。しかしその後もゆっくりと風味が変わって、2週間ぐらいまではおいしく飲めると思います。
自家焙煎をしているコーヒーショップなら、いつ焙煎したのかを教えてくれますから、そのような店で焙煎後3日以内の新鮮な豆を購入するといいでしょう。

コーヒー豆にもさまざまな種類がありますが、飲む人の好みで選んでください。エスプレッソには深煎りのエスプレッソ・ブレンドじゃなければいけないなんてことはありません。焙煎度は、あまり浅煎りの豆はマキネッタのコーヒーには合わないと思いますが、深煎り以外はダメというわけでもありません。
焙煎度が選べるようでしたら、フルシティローストという焙煎度が標準的だと思います。フルシティローストは深煎りに属しますが、酸味も残っていて苦味やコーヒーならではの香りも高い焙煎度です。苦味が好きなら、極深煎りのフレンチローストや、極々深煎りのイタリアンローストを選んでもいいと思います。ミルクと合わせる時にはフレンチやイタリアンといった深い焙煎度の豆がミルクとの相性がいいようです。
なお、コーヒーの銘柄にもブラジルやコロンビア、マンデリン、キリマンジャロなど、さまざまな銘柄がありますが、どれを選ぶかは完全に好みの問題です。また、マキネッタにしろ機械式にしろ、エスプレッソでは単一の銘柄で楽しむよりは、さまざまな種類の豆をブレンドするのが一般的だと思います。特にマキネッタの場合は、銘柄ごとの繊細な味わいを楽しむというよりも、マキネッタのエスプレッソならではの濃厚で力強い味わいが楽しめるエスプレッソ向きのブレンドがお勧めです。
もっとも日本ではエスプレッソ向きのブレンドを置いているコーヒー専門店は多くありません。もし適当なブレンドは見つからなければ、深煎りのブラジル・サントスやガテマラ、ケニアなどを選べばいいでしょう。
しかし単一の銘柄(ストレート)で淹れたコーヒーは、エスプレッソの複雑な味わいに欠けていて何か物足りない感じになってしまいます。残念ながら、私の家の近くにはあまりいいエスプレッソ・ブレンドを売っている店がないので、自分で適当にコーヒー豆をブレンドして飲んでいます。自己流のブレンドでも結構いけるコーヒーになるものです。
エスプレッソ用ブレンドは、普通のドリップ用のブレンドよりも混ぜる豆の種類が多く、普通は5種類程度の異なる豆をブレンドしますが、自宅でブレンドするのであれば3種類ぐらいの豆をブレンドすればいいでしょう。たとえばフルシティローストに焙煎したブラジル(苦味)とコロンビア(コク)とエチオピア(モカ)(香り)の豆を買ってきて、苦味が好きならブラジル5、コロンビア3、モカ2ぐらいの割合、マイルドなコーヒーが好きならコロンビア5、ブラジル3、モカ2ぐらいの割合でブレンドしてみてください。もちろん割合は自分の好みで変えても結構です。この他にも、苦味系ならガテマラやマンデリン、マイルド系ならタンザニア(キリマンジャロ)やケニアなどを選んでもいいと思います。エチオピア(モカ)は香りが良くなります。ちょっと野性的な力強さが欲しければロブスタという種類のコーヒー豆を1割か2割程度ブレンドします。ブレンドの話を始めるときりがないのですが、あまり難しく考えずに適当に自己流で手元の豆を混ぜて試してみてください。よほど運が悪くない限り、失敗して飲めないなんてことはありません。

コーヒー・ミルを選ぶ

コーヒー豆は粉に挽かずに、豆のまま購入し、飲む直前にコーヒー・ミル(グラインダー)で自分で粉に挽いてください。粉の状態で買ってくると、急速に香味が失われ、酸化が進みます。粉に挽いてしまったら、賞味期限は1日がいいところです。
しかし、ここにもとても重要なポイントがあります。マキネッタではエスプレッソ用に極細挽の粉を使います。ところが普通のコーヒー・ミルではマキネッタで使えるような極細挽ができないのです。「エスプレッソ用の極細挽ができる」と表示されているミルを使ってください。
ポーレックスのミル
ポーレックスのミル
たかがミルと言っても、エスプレッソ用のミルはマキネッタ本体より高価ですが、エスプレッソ用のミルを使うかどうかで誰にでもわかるぐらい、はっきりと味が変わります。一般の人が「マキネッタを使ってみたけど、おいしくない」という場合、ほとんどはミルの問題だと思います。
エスプレッソ用のミルに求められる性能は、できるだけ細かく挽けることと、粉の粒が揃っていること、微粉が少ないことです。この3つの性能を満足させるミルは何十万円もするので、一般の家庭ではどこかで妥協することになります。私が自宅で使っているのはポーレックスというブランドの手回しミルです(写真)。細かく挽けて、そこそこ粒も揃っています。理想的とは言いませんが、比較的安価(6000~8000円程度で入手可能)十分おいしいエスプレッソが飲めます。電動ミルより静かですし、エスプレッソ一杯分ぐらいなら手回しで挽いてもそれほど手間もかかりません。もちろんエスプレッソ用に挽けるのであれば、電動ミルでもかまいません。

マキネッタの構造と抽出の原理

マキネッタを使う前に、この器具の構造と動作について簡単に説明しておきます。
MokaCoffeePot
マキネッタの構造(出典:WikiMedia)
CC Attribution-Share Alike 2.5 Generic

右の図はWikiPediaに掲載されていた図で、WikiPediaを見れば説明も書かれているのですが...
なお、この記事での説明は、ビアレッティ社のモカ・エキスプレス1カップ用を前提にしています。ブリッカやムッカなどは特殊な構造なので、この記事の説明は通用しない部分がありますので注意してください。

マキネッタは大きく3つのパートにわかれていて、一番下、図のAの部分(以下、タンク)に水を入れ、真ん中のロート型のフィルタバスケット、図のBの部分(以下、バスケット)にコーヒーの粉をセットします。そして上のCの部分(以下、カップ)をしっかりと取りつけて全体を火にかけます。しばらくすると、タンクの水が沸騰して蒸気圧でロートの下から湯が押し上げられます。押し上げられた熱湯はバスケットのコーヒー層を通ってさらに上に上がり、カップに抽出されたコーヒーが溜まるというわけです。
沸騰が始まってから抽出が終わるまでには数十秒かかります。バスケットにセットされたコーヒーの粉が荒すぎると十分な抽出が行われず、薄いコーヒーになってしまいます。逆に粉が細かすぎたり、ぎゅうぎゅうに詰めてしまうと湯の通りが悪く、雑味が多くなったり、場合によってはタンク内の圧力が上がりすぎてタンクに取り付けられた安全弁が開き、抽出ができなくなってしまいます。
つまり、バスケットに詰める粉の細かさ、粉の量、詰め方などがおいしいコーヒーを作るための重要な要因になる、ということです。

バスケットにコーヒーの粉を詰める

オーソドックスな方法は、まず下のタンクに水を入れてからバスケットをセットし、コーヒーの粉を詰めます。その方が楽なのですが、私はタンクに水を入れる前に、バスケットを取り外して粉を詰めています(写真参照)。この方法は粉を詰めたバスケットの置き方に困るのですが、少々理由があってこのようにしています。もちろんオーソドックスに、まず水を入れてからバスケットをセットする方法でもかまいません。

まずバスケットに詰めるコーヒーの量は、マキネッタのサイズによって異なります。1カップ用を使う場合、7グラム(コーヒースプーンで1杯ぐらい)の豆が標準です。ただし、最適な豆の重さは豆の焙煎度や挽いた粉の細かさによって多少(±0.5g程度)違います。
いちいち重さを計るのが面倒なら適当な計量スプーンなどを使ってもかまいません(私はコーヒー・スプーンを使っています)。
いずれにしても、1杯分、あるいは自分が使っているマキネッタのバスケットのサイズに応じた量の豆をミルで挽いて、バスケットに詰めます。
なお、ミルにポーレックスを使用する場合、エスプレッソ用に挽くためには挽き目調整のネジを一番細かく締め込みます。一番細かい設定で問題がある場合は一段階か二段階粗くした方がいいこともあります。 
挽いた粉を下の写真のようにバスケットにふわっと山盛りになる程度に入れ、バスケットの中で疎密がないように、均等になるように詰めてください。エスプレッソ・マシン用に挽いた細かい粉だとバスケットに山盛りにすると多すぎて湯が通らないかもしれません。挽き目が細かい粉を使う場合は少なめにします。

1杯分7g
1カップ用なら7g

フィルタバスケット
豆の量はバスケットに山盛り
粉を均す
山盛りの粉を軽く詰める


マキネッタのコーヒーの味を決める最大のポイントが、ここです。バスケットの中で均等にむらなく粉を詰めます。
粉の詰め方にむらがあると、均等に湯が通らず、密度が低い部分だけを通るので、十分においしい成分を抽出できません。かといって、ぎゅうぎゅうと詰めてしまうと湯が通りません。細かい粉はあまり強く詰めず、比較的粗い粉は多少強く詰めます。このあたりの力加減はコーヒーの粉の状態によっても違うので、何度かトライアンドエラーをしながら一番おいしいコーヒーになるようにしてください。
基本的には、薄くてスカスカな味だったら強く詰める、あるいは粉の量を多くする、あるいは粉をもっと細かく挽きます。なかなか湯が上がってこない、あるいはエグみが強い場合は軽く詰める、あるいは粉の量を少なくする、あるいは粉の挽き目をすこし粗くします。
粉を詰める時に、バスケットの中で密度が均等になるように、私はまず半分ぐらい粉を入れてフィルタバスケットを机に軽くトントンと打ち付けて均した後、残りの半分を入れてまたトントンと打ち付けて均し、最後に指やスプーンの背を使ってバスケットの表面を平らにしています。
私がまず先にバスケットに粉を詰めるのは、この「トントン」をやりたいからです。こうすると、強く押し付けなくても、バスケット内の粉がふわっと均等になります。
もちろん、面倒なら、先に水を入れてバスケットをセットするという一般的な方法でもかまいませんが、慣れないとバスケット内の粉に疎密が出てしまいますから粉の詰め方に注意してください。

水を入れる

次にタンクの部分に水を入れます。 1カップ用のタンクはだいたい50ccぐらいの水が入ります。またタンクには、圧力が高くなりすぎた場合に高圧の蒸気を逃がす安全弁がついています。安全弁の下には段がつけられていて、この段の部分まで水を入れます。水の種類は普通の水道水でかまいません。ミネラル・ウォーターを使ったり軟水を使ったりすれば、何となくコーヒーの味は変わるような気もしますが特においしくなるわけでもないので、私自身は蛇口から出てくる水道水をそのまま使っています。このあたりはドリップ・コーヒーと違うところです。

安全弁の下の段まで給水
水を入れるタンクの部分
さて、ただ「水を入れる」と言っても、この水の入れ方は人によっていろいろな流儀があるようです。一般的なマキネッタの使い方の説明では、上記のように水位を指示する段のところまで(安全弁にかからないように)水を入れます。安全弁のところまで水を入れてしまうと、安全弁が開いた時に熱湯が噴出することになりますから、絶対に水位が安全弁まで上がらないようにしてください…と一応書いておきましょう。
私の流儀では、安全弁にかかる程度まで少し多めに湯を入れています。多めに湯を入れる理由は以下の通りです。
水が少ないと、マキネッタをセットした状態である程度の容量の冷たい空気がタンク内に閉じ込められた状態になります。この冷たい空気は、マキネッタを加熱することで膨張します。まだ水が沸騰していない状態ですから、まだ湯の温度は低い状態です。しかしタンク内の空気が膨張するので、コーヒーのおいしさを抽出できるだけの温度になっていない低温の湯がバスケットに押し上げられてしまいます。
空間を満たしてタンク内に閉じ込められる空気の量を減らし、また空気の温度も上げておくことで、空気の膨張の影響を少なくできるわけです。
さらに、冷たい水ではなく、ある程度の温度の湯を入れることで、閉じ込められる空気の温度が上がり、その分空気は膨張した状態になります。そのため、加熱の途中でバスケットに上がってくる低温の湯の量を少なくすることができます。湯の温度は何度でもかまいませんが、温度は高いほうが膨張の効果を抑制することができます。あまり熱いとタンクに触れなくなるので、私は軽く温めた50度から60度ぐらいの湯を使いますが、面倒な時は冷水を使うこともあります。
(余談ですが、2~3カップ用マキネッタで1杯分のコーヒーを作るような時、単にタンクに入れる水とバスケットに詰める粉の量を減らすだけでは、この空気の膨張の影響でぬるくてまずいコーヒーになってしまいます。)

もうひとつ、決してお勧めはしない方法ですが、タンクに規定通りの量の水を入れてバスケットも上のカップもセットしない状態で火にかけて、先に沸騰させてから、一度火から外してバスケットとカップを取り付けるという方法もあります。もちろん、とても熱くなっているので軍手やタオルなどが必要ですが、軍手やタオルは湯がかかると火傷が深くなるので危険です。とても危険なので絶対お勧めしないのですが…おいしいコーヒーができます。特に大容量のマキネッタで少量のコーヒーを作らなければならない時にはこの方法しかないと思います(でもお勧めしません。本当に危険です。体験者が言うのですから間違いありません)。
フィルタやパッキンに異物が
付着していないことを確認

タンクに水を入れたら、粉が入ったバスケットをセットして上のカップをしっかりと回して取り付けます。
この時にカップ側の裏についているフィルタやパッキンにコーヒーの粉が残っていたら、きれいに取り除いておきます。パッキンにコーヒーの粉などが付着したままだったり、取り付けがゆるいと、タンクとカップの継ぎ目から圧力が逃げてしまいます。それだけでなく、継ぎ目から熱湯が吹き出して、火を止めたくてもレンジに近寄れず、大変なことになってしまいます。もちろん、これではおいしいコーヒーにはなりません。

加熱する

火にかける
ガスレンジに乗せる
粉を入れ、水を入れてカップを取り付けたら、いよいよ火にかけます。
小さな1カップ用のマキネッタだと、家庭用のガスレンジを使う場合は、五徳に乗らなかったり、乗っても安定しないかもしれません。マキネッタ用に専用のプレートも売っていますが、私は写真のようにトレー用のステンレス網を五徳に乗せ、その上にマキネッタを置いています。ちなみに、この網は100円ショップで買ってきたものです。
このようにマキネッタは、直接火にかけるので「直火式エスプレッソメーカー」と呼ばれることもあります。
マキネッタはIHヒーターでは加熱ができないので、ガスレンジがない家庭では、カセットコンロなどを使ってください。小さなマキネッタにはキャンプ用のバーナーも便利です。キャンプ用バーナーはシェラカップなど小さなものも乗せられるように五徳部分が小さいため、マキネッタを乗せても不安定になりません。それに、天気のいい日に野外でエスプレッソを飲んだりするときにも使えますから。

火加減は弱火
火加減は弱火
加熱するときの火加減は弱火です。あまり弱すぎるとなかなか温度があがらないので、弱ければいいというものでもありませんが、強すぎは厳禁です。写真の火の大きさを参考にしてください。
強火で加熱すると、マキネッタの取っ手が熱くなって持てなくなってしまいますし、マキネッタの上のカップも高熱になるため、抽出されてきたコーヒー液が高温のカップに触れて焦げてしまいます。また、高熱でパッキンも劣化します。
しばしば「マキネッタのコーヒーは焦げたような味がするから嫌いだ」という人がいますが、「焦げたような味」はほぼ間違いなく加熱時の火力が強すぎたというケースです。

ところで加熱の際に、どういうわけかマキネッタの愛好者には、マキネッタのカップの蓋を開けたままにしておく、という妙な風習があります。蓋を閉めて加熱しようものなら、「お前、マキネッタを知らないな」という目で見られるでしょう。
なぜ蓋を開けたままにしておくのか、イタリア人に聞いても理由はよくわかりま せん。「蓋を開けておくほうがおいしいから」というのですが、蓋を閉めて加熱しても私には味の違いがわかりません。また、加熱時に水蒸気が蓋に当たって水 滴になり、抽出したコーヒーが薄くなってしまうからだという説明をインターネットで読んだこともありますが、少なくとも私のマキネッタではどのサイズで も、蓋を閉めても水蒸気が付くことはありません。
抽出
ジュワッとコーヒーが上がってくる
最近のモカ・エキスプレスでは蓋が開きっぱなしにならないように、一定の角度を超えて蓋が開かないようになっています。蓋を開けられるマキネッタを使う場合でも、上がってきたコーヒーが飛び散らないようにするためにも、蓋は閉めておいた方がいいでしょう。

さて、火にかけて数分間加熱すると、ジュワジュワと小さな音が聞こえてきます。そろそろコーヒーが上がってくる頃です。音が聞こえ始めてから数十秒でカップにコーヒーが上がってきます。
この時、細かい泡が混じったトロッとしたコーヒーがゆっくりと上がってくるはずです。
もし上がってきた液体がまったく泡のないさらさらのコーヒー液だったり、とろっと流れ出さないようなら失敗。前者は粉の挽き目が粗すぎるか、粉が少なすぎる、あるいはバスケット内の粉が不均等などが原因です。後者の場合は挽き目が細かすぎる、粉が多すぎる、粉の詰め方が強すぎるなどが原因です。前者の場合、できたコーヒーは決しておいしいコーヒーではないでしょう。後者の場合、加熱を続けると安全弁が開くこともあります。安全弁が開くようなら、コーヒーはあきらめて、火を止めてもう一度、やりなおしてください。
さて、ここでまた大切なポイントがあります。火を止めるタイミングです。
タンクの水(または湯)を多めに入れる私の方法では、じゅわっといい感じのコーヒーが上がってきたら、蓋を閉めてそのまま20秒ほど加熱を続けて火を止めます。粉の詰め方によって加熱する時間は異なりますが、ノズルからボコボコと大きな泡が出てくる直前で火を止めるのがコツです。この時点では、まだノズルからコーヒーが出ている状態ですが、大きな泡が出てコーヒーが上がらなくなるまで加熱する必要はありません。実際に大きな泡とともに上がってくるコーヒーは、エグ味が強く、決しておいしいものではありません。せっかくのおいしいコーヒーに、わざわざ不味いコーヒーを混ぜる必要はありません。マキネッタでも機械式エスプレッソマシンでも、もちろんドリップでもフレンチプレスでも、どんな器具を使う場合でも、おいしいコーヒーの基本は「おいしい成分だけを抽出して飲む。まずい成分は捨てる」ということなのです。
とにかく、最初にコーヒーが上がってきてから20秒から30秒程度で火を止めた時にちょうど1杯分のコーヒーが上のカップに溜まれば、粉の詰め方も適切で、おいしいコーヒーになっているはずです。
なお、説明書に書かれているように規定量の水をタンクに入れて使う場合は、ボコボコと大きな泡が出てきた時点で火を止めても、それほど過抽出にはならないようです。

さあ、いよいよこれでできあがり。まだ余熱でコーヒーが上がっているうちに、エスプレッソ用のカップにコーヒーを注いでください。
 
おいしいコーヒーをどうぞ

エスプレッソ用のカップは30ccが標準とされていますが、1カップ用のマキネッタで多めに水をタンクにセットした場合、最後まで加熱すると40~50cc程度のコーヒーになりますが、いいタイミングで火を止めればちょうど30~40cc程度のコーヒーになります。
とにかくここまでのプロセスが適切に進んでいれば、おいしいコーヒーになっているはずです。普段はコーヒーに砂糖は入れない、という人も、マキネッタで作ったエスプレッソはぜひイタリア風にたっぷり砂糖を入れて飲んでもおいしいですよ。


粉の状態をチェック

だしがらもしコーヒーが「あまりおいしくなかった」という場合は、出がらしの状態を見て何が問題だったのかを判断してください。バスケットに残ったコーヒーの出がらしの状態を見ると、粉の詰め方が適切だったかどうかがよくわかります。
適切に詰められていた場合は、写真のようにバスケットの形のまま固まっているはずです。出がらしの厚みにむらがある場合、粉が均等に詰まっていなかったことがわかります。出がらしがきれいな形で出てこずにぐちゃぐちゃになっているのは、粉の挽き目が粗いからです。
出がらしの厚みが均等であれば、粉のおいしさを十分に引き出すことができていたはずです。

マキネッタのクリーニングとメンテナンス

使った後のマキネッタを洗うときにも重要なポイントがいくつかあります。
使用後のマキネッタの粗熱が取れたら上下を分離して、タンク内に残った水を捨ててきれいに水分を拭っておきます。上のカップはざっと水で洗います。この時、洗剤を使って洗わないでください。
新品のマキネッタや、洗剤できれいに油分を落としたマキネッタは、抽出されたコーヒーが直接アルミの金属面に触れるため、金属くさいコーヒーになってしまいます。使い終わったマキネッタのカップに付着したコーヒーのオイル分が一種のコーティング剤の役割を果たして、次にコーヒーを作るときにアルミの金属臭さがコーヒーに移ることを防いでくれます。そのため、上のカップの内部は洗剤を使わず、僅かな油分を残しておきます。
もっとも、コーヒーの油分を残したまま長い間放置すると、油分が変質して逆にいやな臭いがコーヒーに移ってしまいます。毎日マキネッタを使う人ならともかく、たまにマキネッタを使うという程度であれば、洗剤を使ってもいいと思います。もし洗剤で洗ってアルミ臭が気になるようなら、マキネッタを使う前にカップに牛乳などを入れて牛乳の油分が落ちない程度に軽く水洗いして使ってもいいかもしれません。ステンレス製のマキネッタなら、金属臭がコーヒーに移ることはないので洗剤で洗ってもかまいません。
アルミ製のマキネッタは、長い間水分に接していると、白く腐食してしまいます。特にタンク内に残った水分をきれいに拭きとっておかないと、そのうちにタンク内部が白く腐食してきます。腐食しても使用に問題はありませんが、見た目も悪いのでタンク内の水分はしっかり拭っておくことをお勧めします。

また長い間マキネッタを使っていると、次第にゴムのパッキンが劣化してきます。パッキンが劣化すると上下の継ぎ目から蒸気が漏れるようになるので、その時には新品に取り替えてください。
パッキンはマキネッタのサイズごとに専用の交換用パッキンを使います。
消耗品というわけではありませんが、粉を入れるロート型のバスケットも、使っているうちに内部にコーヒーのカスが付着し、均等に湯が通らなくなることがあります。バスケット内部の掃除は難しいのですが、重曹を溶かした湯で煮沸すると、ある程度はきれいになります。掃除が面倒なら、新しいバスケットだけでも購入できますから、新品に交換することもできます。

エスプレッソの楽しみ方

マキネッタで作ったコーヒーも、所詮ただのコーヒー。自由に好きなように飲めばいいのですが、最後にマキネッタで淹れたおいしいコーヒーの飲み方について書いておきます。

基本は、たっぷり砂糖を入れて甘くして飲むスタイルです。あの小さなカップにスプーン2杯か3杯ぐらい砂糖を入れて、軽くまぜて飲みます。最後の一口はコーヒーを飲んでいるのか、コーヒー味の砂糖を食べているのかわからないぐらいですが、これがなかなかおいしい。糖分は控えているという方にはお勧めしませんが、こうして甘くして飲むエスプレッソは、コーヒーというよりは飲むスイーツと言うべきかもしれません。

もちろん、それほど大量の砂糖を入れず、スプーン1杯、あるいはスプーン半分ぐらいの砂糖を入れて飲んでもおいしいと思います。砂糖がエスプレッソの強い苦味を押さえてコーヒーをマイルドにしてくれます。また、あまりおいしくないコーヒー豆でも、砂糖を入れることで欠点が気にならず、おいしく飲むことができるようになります。

そして、砂糖を入れずにコーヒー本来の苦味や酸味、コクを味わうというスタイルは、日本のコーヒー好きにとっては一般的な飲み方かもしれません。私はわざわざ砂糖を入れるのが面倒なので、いつも砂糖を入れずに飲んでいますが、あまりおいしくないコーヒー豆を使うと、豆の欠点が目立ちます。またコーヒーの欠点隠しのテクニックとしては、塩辛くならない程度の少量の塩を入れるという方法もあります。
ちなみに、エスプレッソを飲む前に、一口、水を飲んで口の中をさっぱりさせてからエスプレッソを飲むと、よりエスプレッソ本来の味を楽しめると思います。

一杯分のエスプレッソを100ccぐらいの湯で薄めれば、いわゆるアメリカーノです。
湯の代わりに温めたミルクをたっぷりとまぜるとカフェ・ラテ。そして、ミルクフォーマーで泡立てたミルクを注げばカプチーノになります。
薄いドリップ・コーヒーよりも、濃いエスプレッソはミルクとの相性が良いので、カフェ・ラテやカプチーノには最適です。
エスプレッソは食事と一緒に飲むには量が少なすぎますが、アメリカーノやミルクとあわせると朝食の時にパンと一緒に飲むコーヒーとして最適です。ちなみに、エスプレッソの本場、イタリアではカプチーノは朝食の時に飲むものだそうで、午後にカプチーノを飲む人はいないのだとか。ヨーロッパ人にとって、ミルクは飲み物というよりは食べ物に近いのかもしれません。

夏の暑い日は、マキネッタで淹れたコーヒーでアイスコーヒーを作ってみてはいかがでしょうか。
マキネッタで淹れた濃いコーヒーを大量の氷を入れたコップに注ぎ、よく混ぜれば最高のアイスコーヒーになります。ドリップ・コーヒーでアイスコーヒーを作ると、どうしても薄くなってしまいますが、エスプレッソなら濃くて香り高いおいしいアイスコーヒーになります。
ここにミルクを注げばアイス・カフェラテですが、熱いエスプレッソを氷に注ぐとちょっと水っぽくなってしまうかもしれません。私は氷を入れたバットに小さめの金属製バットを置いて、カリカリに冷えた金属製バットにエスプレッソを注いでコーヒーを冷やします。冷たくなったコーヒーとミルクをあわせてアイス・カフェラテを作ると、水っぽくない濃厚なアイス・カフェラテになります。

好きなフレーバーを加えてフレーバー・コーヒーにしてもいいでしょう。
加えるフレーバーはどんなものでも好きなものを。甘い香りのフレーバーがよく合うようですが、たとえばバニラ、ヘーゼルナッツ、マカデミアナッツ、チョコレート(ココア)、カラメル、シナモン、ナツメグ、オールスパイスといったスパイス類など。
この他にも、例えばレモンやライムの汁を加えればさっぱりしたコーヒーになりますし、バターやココナツオイルを浮かせるとコクのあるコーヒーに、そしてワインやリキュールとあわせればちょっと大人のコーヒーになります。

マキネッタで作った濃いコーヒーは、さまざまなアレンジ・コーヒーのベースとしても最適ですし、コーヒーゼリーやコーヒー風味のケーキなどのお菓子を作るときにも便利です。

マキネッタは、コーヒーの世界を広げてくれます。
多くの人にマキネッタで作ったコーヒーの世界を楽しんでいただきたいと思います。

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