2015年7月9日木曜日

産経の朴槿恵名誉毀損裁判について

産経の朴槿恵名誉毀損裁判の公判で米国人ジャーナリストが弁護側証人に。
産経が割と詳しく伝えている。
第7回公判の詳報(上)
第7回公判の詳報(下)

産経にしてみれば身内の裁判だから、詳報と言っても都合のいいところだけの詳報のような印象があって、検察からのイエローペーパーがらみの質問の部分の証言内容は書かれていない。ぼくとしては、まさにその部分についてまともなジャーナリストがどう答えるのか一番知りたかったのに...
実際、外国のメディアが現地のさまざまな噂や報道を参考にしたり引用することは普通に行われているし、信頼できる現地メディアの報道内容を伝えることその ものに問題はないと思う。しかし産経の記者は、真偽が不明な噂に言及した朝鮮日報のコラムを引用して、さらに朝鮮日報も書かなかった「噂」の内容を紹介し てしまった。ちなみに、この「噂」は朝鮮日報がコラムで紹介する以前から、韓国の政治部記者の間では知らない人はいないほど有名な話でもあったという。
 


証人に立った米国人ジャーナリストは、真偽が確認できない場合は周囲の人に聞くと言っているが、産経の記者はこの有名な噂の真偽をせめて現地の記者などに 聞いて確認しようとしただろうか。たぶん、確認の努力はしていない。韓国人記者に聞いても、おそらく記事にできるような内容じゃないと言われたはず。米国 のクリントン大統領のスキャンダルは重大な事実があったけれど、今回の朴槿恵をめぐる噂は、全く根も葉もない噂だったのだから、確認のしようもない。
ちなみに、弁護側証人に予定されていた朝鮮日報の記者は公判を欠席したそうだが、産経の記者の情報ソースはあるいはこの朝鮮日報の記者だったのかもしれな い。そうだとすると、欠席したくもなるだろうね。ここで変な証言をすればクビが飛ぶ。あるいは産経なんかを弁護したら朝鮮日報の読者からクレームが殺到す る。どっちにしてもろくなことはない。

おそらくこの公判で検察側は、こうした「噂」をめぐることを証人に対して質問しているはずなのだが、産経の「詳報」では、「その後、検察側の質問は、(中 略)『イエロー・ジャーナリズム』の問題点などをただす質問などが続いた」という調子でゴソッと抜けている。このあたりが何とも臭い。産経としては伝えた くない内容だったのだろう。
また証人は問題の記事は「ざっと読み終える内容の記事」だったとも言う。朴槿恵の私生活に切り込むとか、大統領の職務スタイルを検証するといったような記 事ではなく、読んでも読まなくてもいいようなしょーもないゴミみたいなコラムだった…とは言わなかったけど、まあ、そういう意味を上品に表現したんだろ う。あるいは、産経が上品にリライトしたのかもしれない。

日本でもしばしばSLAPPが問題になる。今回の産経の件のように韓国でよくあるメディアが「名誉毀損」で告訴・告発されるというのもSLAPPだろうし、メディアに対する卑怯な攻撃として安易に使われているのは明らか。いくら韓国社会が名誉を重んじる社会だとしても、産経のようなどうしよ うもないヨタ記事だったとしても、名誉毀損の乱発が韓国のメディアにとって強い圧力になっているのは事実であって、これは決して健康な政権とメディアの関係ではないと思う。
少なくとも言論の自由の価値を考えれば、こんな裁判が進んでること自体がおかしいのだけれど、韓国でのこれまでの同種の裁判の判決などを考えると、今回のケースは有罪になる可能性が高いと思う。しかし、今回の国際問題にまで発展して韓国の言論の自由が問われることになってしまった産経のヨタ記事について、韓国の裁判所がどんな判断をするのか、韓国メディアウォッチャーとしては興味津々。

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