2013年2月28日木曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 2

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 「不当なことで利益を得る(1)」の続編、その2です。

不当なことで利益を得る(2)

仲裁専門ローファーム、「彼らだけのリーグ」

[情報共有と知的財産権]「ISD提起の威嚇」だけで政府の政策が挫折

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/ 2013年2月4日、11:35 AM

昨年、ローンスターがISDにより韓国政府に約2兆4千億ウォンの損害賠償金を請求したという。このとてつもない訴訟を代理するローファームが選定された。 ローンスターと韓国政府(法務部)は、国内の法務法人としてそれぞれ世宗(セジョン)と太平洋(テピョンヤン)を選定し、海外のローファームとしては米国のローファームのシドリー・オースティン(Sidley Austin)とアーノルド・アンド・ポーター(Arnold&Porter)を選定したという。

シドリー・オースティンとアーノルド・アンド・ポーターは、2011年に一番多くのISDを手がけた投資仲裁専門ローファーム上位20位の5位と6位を占めた(下表参照)。今回は、これらのローファームが投資仲裁産業の成長のために何をしているのかを調べてみよう。研究報告書「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者らが投資仲裁ブームをあおる方法(Profiting from injustice. How law firms、arbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」によれば、次のように要約できる。

  • 他の仲裁専門弁護士、仲裁者、資金提供者、学者と友人になれ
  • 政府公務員をスカウトしろ
  • 仲裁者になれ
  • ビジネスを創り出せ。戦争、経済危機、政治的変化に注目しろ。多国籍の依頼人にISDはそうした激変で金を稼げることを納得させろ。 
  • 「投資協定ショッピング(BIT-shopping)」をして、同じような事件で併行訴訟を追求しろ。
  • 政府を脅せ。訴訟の威嚇は政府が進んで諦めたり合意させる。
  • タダで貧しい政府の力量を強化させろ。みんな潜在的な依頼人だ。
  • 投資協定の改革に反対してロビーをしろ。
  • 投資仲裁システムを保護しろ。 

こうしたローファームの行為をこの報告書は「救急車を追いかける弁護士(ambulance chaser)」に例える。これは19世紀末に(交通)会社と被害者に訴訟を誘導し、金を稼いだことから出てきた表現だ。今日、これはグローバルだ。 カナダのヨーク大学(York University)のオズグッド・ホール・ロースクール(Osgoode Hall Law School)のグス・ヴァン・ハートン(Gus Van Harten)副教授は、「仲裁専門弁護士は、単に救急車を追う追撃者ではなく、仲裁者を兼ねて事件を作り出す」と話した。

緊密なコミュニティ、巨大なビジニーズ

国際的には3つのローファームが投資仲裁ビジネスを主導している。英国のフレッシュフィールズ(Freshfields Bruckhaus Deringer)、米国のホワイト・アンド・ケース(White&Case)とキング・アンド・スパルディング(King&Spalding)だ。 Freshfieldsは今までに165件以上のISDを担当した。2011年には3つのローファームが130件のISDを担当した。新規ローファームの進入は難しい市場だ。

ある弁護士は、ICSID(国際投資紛争解決センター)に提起された30件の訴訟のうち25件がヘビー級に行くと推測している。投資家から訴訟を受ける国家、つまり非西欧国家のローファームにはほとんど参加する機会もない。

仲裁専門弁護士は投資仲裁コミュニティの「門番」になって、緊密にコミュニティを維持している。この小さな弁護士グループは、仲裁者とコンサルタント、専門家、証人を行き来して、さまざまな役割を果たす。この小さなグループの中で、仲裁判定部は仲裁専門弁護士を知り、弁護士は仲裁判定部を知る。

仲裁者と弁護士を兼ねることは何回も問題になったが、相変らず認められている。仲裁者となる25人の弁護士がいるFreshfieldsは、この市場を主導している。 また、仲裁専門弁護士はコンサルタントとしても大活躍をしている。

ゲームの不文律を知る者は別にいる

ローンスターが勝つか、韓国政府が勝つか。その答はしばしば仲裁者になってきた英国のローファーム、Herbert Smith FreehillsのMatthew Weinigerに関する大学の講義から知ることができる。彼は国際商業裁判所(ICC)が作った薄い小冊子と英国の法廷規則の2冊を比較して「成文化されていない内容がこれほど多い。 この内容を知っているのが仲裁専門弁護士だ」と学生に説明した。

私たちが仲裁判定の結果が正しいかどうかを確かめる基準になりそうなものは存在しない。数千億ウォンから数兆ウォンにのぼる賠償金がかかる訴訟を全的に仲裁専門弁護士に依存しなければならず、彼らが多額の受託料を受け取るのは当然ではないだろうか?

降参しろと脅すこと

ISDは投資家にとって政治的な武器だ。バッテンフォールとドイツのISDに関与したローファームのLutherは、「すぐありそうな投資協定訴訟の影の下では、解決に到達するのはやさしい」と言う。ISDを提起するという脅しや仲裁意向書を通知するだけで、政府の保健、環境政策などを挫折させた事例は多い。

代表的な例が超国籍タバコ会社からの脅迫で、カナダ政府が進んで禁煙政策を放棄したことだ。NAFTA協定の発表から5年経った時、カナダのある元公務員は「この5年間、新しい環境規制と提案をすると、ニューヨークのローファームから手紙が送られてきた。農薬、医薬品、特許法、ドライクリーニングの化学薬品に関するものだった。事実上、すべての新しい試みがターゲットにされ、ほとんどは陽の目を見なかった」と話した。こうした「予防戦争(pre-emptive strike)」はますます増えるだろう。

BIT(二国間投資協定)ショッピング

仲裁専門弁護士は、最も投資家親和的な協定を選ぶ。別名『二国間投資協定ショッピング(BIT shopping)』だ。超国籍企業は同じ事件に対し、さまざまな投資協定を利用して、同じ政府を相手に何回も訴訟をすることができる。

最も有名な事件の一つが米国の化粧品会社、エスティ・ローダー(Estee lauder)の相続者であるRonald Lauderが米チェコBITとオランダ・チェコBITを利用し、立て続けにISDを提起したことだ。前者は棄却されたが、後者ではチェコは利子とともに保健予算総額にあたる2億7千万ドルを支払うよう命令された。

特にオランダは多くの投資協定を締結しており、「協定ショッピングの出入口(gateway for treaty-shopping)」として有名だ。アムステルダムに基盤をおくローファームのDe Brauwは、オランダを「通じて」、開発途上国とエネルギーが豊富なところに投資しろと国際的に広告を出す。米国のローファーム、Baker McKenzieはオランダにある仲介会社を通じ、中国に投資をしろと依頼人に広告をする。

なぜなら米中投資協定はないが、オランダ・中国の投資協定があるためだ。 オーストラリア政府が2011年4月、今後の協定にはISDを入れないと発表すると、英国のローファーム、Clifford Chanceはまだ外国政府に訴訟をしたがるオーストラリアの企業に「とても人気がある選択」としてオランダを提案した。

増える新しい依頼人、政府を教える

仲裁専門ローファームは、政府が投資協定の交渉をして協定草案を作る時にコンサルティングをして、政策を実行するにあたり、投資訴訟の危険の処理についてもコンサルティングをして、ISDについて教育をする役割もする。

スイスのローファーム、Laliveは、開発途上国の力量強化のための国連機構UNITARのために、投資仲裁について定期的なオンライン教育コースを運営している。貧しい国家の公務員はスカラーシップにより無料で教育を受ける代わりに、ローファームのLaliveは潜在的な新しい依頼人リストを得るわけだ。2011年11月にカナ、ザンビア、リベリア、南アフリカ共和国、ウガンダ、エジプトから来た12人の政府側弁護士が、投資法と仲裁について一週間の訓練を受けた。 この訓練は、Salans、Hogan Lovells、Volterra Fietta、Allen&Overyなどの国際的な大型ローファームがトレーナーを提供し、後援した。

投資協定と仲裁システムの変化を防ぐ

2009年12月、リスボン条約の発効後に、ヨーロッパはいつよりも投資協定に対して論争が続いている。その理由は、まず、リスボン条約が発効するとFTAやBITなど、すべての貿易協定は個別会員国が批准せず、ヨーロッパ議会の批准手続きだけ通れば発効するためだ。二番目は、EUの排他的権限領域がサービス、知的財産権と海外直接投資(FDI)にまで拡大したためだ。

特に、投資部門をEUの排他的権限としたことで、今後EU次元の投資協定を締結する法的装置ができたが、投資政策についてのEU次元の排他的管轄権が完全に確定したわけではない。これによりEUは、共同の投資政策が必要な状況になり、会員国はすでに締結した、あるいは会員国の間で締結されたBITとの関係をどうするのかを決定しなければならなくなった。

2010年7月にヨーロッパ執行委員会は、共同投資規定を立案するための方向を提示する報告書「包括的な国際投資政策の方向(Towards a comprehensive European international investment policy)」で、すでに締結された個別のBITとの過渡的な両立を認める暫定的措置についての規定を提出した。

暫定的措置の内容は、会員国が第三国と締結したBITと、会員国間で締結したBITを存続させるが、EUの法律と合わせて再協議をしなければならず、現在進行中のBIT交渉を続けるということだ。

ヨーロッパの労組と市民社会グループは、長い間、会員国のBITについて整備を要求してきた。具体的にはISDをなくし、投資家に義務を賦課して、さらに正確かつ制約的な表現で投資家の権利を明確にし、政府の統制権をはっきりさせることなどだ。

ヨーロッパ議会が2011年4月に発表した「未来の国際投資政策(Future European international investment policy)」という題名の決議では「投資」、「外国投資家」の概念と範囲を明確に定義し、国家安全、環境、保健、労働者および消費者の権利、文化多様性の領域で政府統制権を保護することを要求した。ヨーロッパ執行委員会は、2012年6月にISD規定案も提出した。

こうした論争に影響を与えるため、国際的な大手ローファームのHogan Lovells、Herbert Smith Freehills、Baker McKenzieは、EUの政策マンを招請して超国籍企業との非公式の論争を行った。ここにはISDを提起したことがあるDeutsche Bankとエネルギー企業のShellも参加した。

そして有名な仲裁者で米国のローファーム、Shearman&Sterlingの弁護士のEmmanuel Gaillardは、EU会員国間のBITを段階的に廃止しようとするヨーロッパ執行委員会の提案について、「惨めな経済的な結果」を招くと憂慮した。彼は最低3件のEU会員国間のBIT訴訟を仲裁してきた事実から、なぜ彼がこの協定を維持しようとしているのかが分かる。

オランダのローファーム、De Brauwは、ヨーロッパ議会の議員に対して既存のBITと高い投資家保護基準を維持すべきであり、特にISDは維持するべきだという内容の書簡を送った。投資保護を労働や環境基準と関連させるなという内容も含まれていた。De Brauwは、オランダ・スロバキアのBITを利用して、スロバキア政府に1億4200万ドルを要求したオランダの保険会社Eurekoを代理している。スロバキア政府は以前、行政府の医療民営化政策をひっくり返し、保険者に非営利目的の基盤で運営するよう要求したことによる。

回転ドア、政府から出たり入ったり

NAFTA協定の交渉家とコンサルタントの何人かは、投資仲裁産業では誰もが知る名前になった。FreshfieldsのJan PaulssonとKing&SpaldingのGuillermo Alvarez Aguilarはメキシコ政府のコンサルタントをし、Daniel Priceは米政府側で交渉した。NAFTAが署名された瞬間、これらの弁護士は企業に対し、政府に訴訟をしろとけしかけた。Jan PaulssonとDaniel Priceは有名な仲裁者でもあり、次回でも議論されるだろう。

仲裁回転ドアに属する多くの人、特に米国では政府と国際機構にバックを持っている。以前は米政府の内部にいて、現在ではローファームのWell, Gotshal&Mangesで働くTheodore Posnerは、そんな人たちが「政府の公務員が交渉する方法と問題を分析する方法を知っている」と話した。

フランスのローファーム、SalansのBarton Legumは、2000年から2004年に米国の国務省で投資家の紛争から米国を防御する代表諮問委員として、新しい投資協定を発展させる支援をした。現在はその時に得た洞察力を利用して金を稼いでいる。NAFTA協定を使い、最低5億2千万ドルの賠償金を米政府に要求したカナダの製薬会社Apotexを代理している。

Legumは有名な仲裁者でもある。米国のローファーム、Greenberg TraurigのRegina Vargoは、30年以上、米政府でCAFTA-DR(米国と中米6か国間の自由貿易協定)のようなFTAと、投資協定での主な交渉家として活動した。 CAFTA-DRの下で初めて提起されたISDで、Vargoは米国の鉄道投資家の代理としてグアテマラ政府から約1200万ドルの賠償金を受け取った。ある同僚によれば、Vargoよりも「CAFTAに密接で、特別な人はいない」と言う。

Anna Joubin-Bretは15年間、開発途上国に投資協定問題についてコンサルティングし、国連貿易開発会議(UNCTAD)にいた。開発途上国を交渉家で埋まった部屋に誘い、結局、数十の投資協定調印国にさせたUNCTADの悪名高い署名パーティーの代表組織者だった。現在は米国のローファームFoley Hoagで政府側を代理して協定草案についてコンサルティングをしている。

上位20位の投資仲裁専門ローファーム

この報告書は、2011年に担当したISD件数について、上位20位のローファームを選定した。ローファームが自ら提供した情報で付けた順位だ。これらの情報は外部的に確認できず、情報を提供しないローファームもあるため、このリストにない国際的な巨大ローファームも投資仲裁産業で、重要な行為者があるかもしれないということを見過ごしてはいけない。

3位になった米国のローファーム、King&Spaldindの履歴を見よう。このローファームには、ワシントン、ニューヨーク、パリ、ロンドン、シンガポールといった主要投資仲裁中心地で活動する50人の仲裁専門弁護士がいる。このローファームの弁護士の何人かは仲裁者としてICC(国際商業裁判所)と仲裁機構にいる。ICSID(国際投資紛争解決センター)の最高重役だったMargrete Stevensは、17年ICSIDに在籍した後、このローファームに移った。前述のように、Guillermo Aguilar-AlvarezはNAFTA交渉ではメキシコ政府のために法的諮問をしていた。このローファームが2012年3月の時点でウェブサイトに公開した37件 のISDのうち35件が投資家を代理した事件だ。

このローファームの成功の鍵は、アルゼンチン政府に対するICSID訴訟での勝利だった。このローファームは2012年2月まで、アルゼンチン政府に対して提起された49件のICSID訴訟のうち、最低15件の訴訟で投資家を代理した。このローファームで国際仲裁グループの共同代表であるDoak Bishopは「アルゼンチンのペソ危機で発生した訴訟について諮問を求める弁護士」と認められている人だ。 彼はアジュリ(Azurix)がアルゼンチンにICSIDを提起した訴訟でアジュリを代理し、1億8500万ドルの賠償金の判定を受け取った。

アジュリは米国のエンロン(Enron)から分社した水企業で、ブエノスアイレスで民営化された上下水システムを買収したが、2000年に深刻な藻類の発生などで、水質に問題が起きた。これについて地方政府が責任を問うたことに対し、ISDを提起した。このローファームの二番目の特徴は、巨大ガス、精油会社のために活動したことだ。90年代中盤に米国の巨大精油会社テキサコ(Texaco)の訴訟を担当し始め、現在はテキサコを買収したシェブロン(Chevron)を代理している。 シェブロンはアマゾンの熱帯雨林で油田掘削による汚染を除去するため180億ドルを支払えというエクアドル裁判所の命令を避けるためにISDを提起した。

乱暴に言えば、投資協定文を作った人とISDの判定をする人と訴訟を代理する人が同じ人だったり、互いに友人になって投資家の利益を保護するシステムを拡大し、そのシステムを利用してISD件数を増やしているのだ。

ローファーム
2011年
ISD数
2011年
収入
2011年
パートナー弁護士
収益
政府側 /
投資者側
有名な仲裁者
備考
Freshfields Bruckhaus
Deringer
(英国)
71 $1.82 billion $2.07 million 双方。主に投資家を代理 Jan Paulsson,
Noah Rubins,
Lucy Reed,
Nigel Blackaby
10年間支配的な投資仲裁専門ローファーム
White & Case
(米国)
32 $1.33 billion $1.47 million 双方
恐らく政府側活動が多い
Carolyn Lamm, Charles Brower
(2005年まで),
Horacio Grigera
Naóon (2004年まで)
2001年金融危機を迎えたアルゼンチンにイタリア債権所有者を代理して数十億ドルISD提起
King & Spalding
(米国)
27$781
million
$1.93
million
ほとんど投資家のために活動 Doak Bishop,
Guillermo
Aguilar-
Alvarez,
Eric Schwartz,
John Savage
米国石油会社Chevronを代理してエクアドルにISD提起
米国企業Rencoを代理しペルーに8億ドルを要求してISD提起
Curtis
Mallet-Prevost, Colt & Mosle
(米国)
20$165
million
$1.54
million
政府
ベネズエラ、カザフスタン、トルクメニスタンなどの政府を代理、2001〜2012年に収益が50%増加
Sidley
Austin
(米国)
18 $1.41
million
$1.60
million
双方
恐らく企業側の活動が多い
Stanimir
Alexandrow,
Daniel Price
(until 2011)
ウルグアイにISDを提起したフィリップ・モリスを代理
Arnold
& Porter
(米国)
17 $639
million
$1.40
million
双方
恐らく政府側活動が多い
Jean Kalicki,
Whitney
Debevoise
カナダにISDを提起した米国製紙会社Abitibi-Bowaterを代理。この会社の工場閉鎖に、カナダ地方政府が伐採権と採取権を撤回したことにISDを提起。その結果カナダはNAFTAでのISD中でこれまで最高の賠償金の1億3千万ドルを支払った。
Crowell
& Moring
(米国)
13 $329
million
$845
thousand
ほとんど投資家のために活動
エルサルバドルが金採堀権を認めず、エルサルバドルGDPの約1%を要求して訴訟したカナダの鉱山会社Pacific Rimを代理
K&L Gates
(米国)
13 $1.06
billion
$890
thousand
双方 Sabine Konradバッテンフォールとドイツとの訴訟でSabine Konradがドイツ政府諮問
Shearman
& Sterling
(米国)
12$750
million
$1.56
million
双方
ほとんどの訴訟で投資家の諮問
Emmanuel
Gaillard,
Philippe
Pinsolle,
Fernando
Mantilla-
Serrano,
Yas Banifatemi
仲裁者Emmanuel Gaillardはこのローファームの最高位者で、投資法と仲裁に対する学問的、政治的論争に絶えず介入
DLA Piper
(米国)
11$2.24
billion
$1.22
million
双方 Pedro
Martinez-Fraga
世界2位ローファーム。ベネズエラを相手にICSIDに提起された何人のISDで投資家を代理
Chadbourne & Parke
(米国)
$306
million
$1.31
million
投資家 不透明な投資仲裁の代表的な例。2011年に11件のISDに介入したがウェブサイトに何も公開していない
Cleary
Gottlieb
Steen &
Hamilton
(米国)
$1.12
million
$2.69
million
双方 Telecom Italiaを代理。Telecom Italiaの少ない投資と欠陥サービスにより、ボリビアがEntelを国有化したためISD提起。その結果ボリビアは1億ドルを支払った
Appleton
& Associates
(カナダ)
$
million
$
million
投資家 NAFTA発効後、初めてカナダに対するISDを提起。精油会社Ethylとカナダの訴訟で1300万ドルの賠償判定を受ける。このローファームは今も定期的にカナダ政府に訴訟を提起
Foley
Hoag
(米国)
$149
million
$1
million
政府 Mark Clodfelter 主に政府のために活動。数人の弁護士が政府にバックグラウンドを持つ
Latham &
Watkins
(米国)
$2.15
billion
$2.27
million
双方 Robert Volterra
(2011年まで)
世界4位ローファーム。アラブの春の後、エジプトの裁判所がムバラク政権下で取得した繊維工場を返還しろとIndoramaに命令したことにISDを提起。
Indoramaを代理
Hogan
Lovells
(米国/英国)
$1.66
billion
$1.16
million
双方
恐らく政府側活動が多い
インドネシアの裁判所がボルネオで英国のChurchillの炭鉱業許可が偽造されたと判決。許可を取り消されたChurchillが20億ドルを要求しISDを提起。Churchillを代理
Clyde & Co
(英国)
$460
million
$915
thousand
双方
恐らく企業側の活動が多い
リビアのカダフィ政権退陣後に初めてリビアで開業した外国ローファーム
Norton Rose
(英国)
$1.32
billion
$620
thousand
投資家のために活動する傾向 Yves Fortier
(2011年まで)
MichaelLee
(2001年まで)
カナダへのISDで投資家を代理してきたカナダのローファームOgilvy Renaultと2011年に合併。
Yves Fortierは2011年まで50年以上このローファームで働く。
Salans
(フランス)
$260
million
$725
thousand
双方
恐らく投資家側の活動が多い
Bart Legum,
Jeffrey Hertzfeld,
Hamid Gharavi
(2008年まで)
Barton Legumは米政府弁護士でいくつかのNAFTA紛争で米国を防御。現在は米国に訴訟をしたカナダ製薬会社Apotexを代理
Debevoise
& Plimpton
(米国)
$675
million
$2.07
million
ほぼ100%投資家を代理 Donald Francis
Donovan
最大の賠償金判定を受けたICSID紛争で投資家を代理。米国精油会社Occidental Petroleumが環境汚染によりアマゾンでオイル生産を中断させられたことでエクアドルに訴訟をして、賠償金17億6千万ドルの判決を勝ち取る

前の記事: ISD条項に関する韓国情報活動家の記事 「不当なことで利益を得る(1)」

原文(レディアン)

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2013年2月27日水曜日

ISD条項に関する韓国情報活動家の記事1

日本でもTPPがらみでISDの問題が注目されるようになって、ISDについて知られるようになってきた。韓国では、韓米FTAでISDが問題になって、今でも議論は続いているのだけれど、Redianという韓国のオンラインニュースサイトに情報共有連帯という市民団体の人がISDに関する記事を書いていて、面白かったのでざっと翻訳してみた。

内容的には2012年11月にヨーロッパのCorporate Europe Observatory and the Transnational InstituteというNGOが作成した"Profiting from injustice"という報告書がベースで、これまで韓米FTAについて提起されてきた問題を加えて再構成したものといえる。とにかく、こういうのを読むと、日本でもTPP参加の議論で大きな焦点になっているISD条項は、相当問題が多いなと思わざるを得ない。もっとも、韓米FTAのようなグローバル協定に反対する立場からの解説なので、問題が多いということを言いたいわけなんだろうし、ぼくもTPPに反対する立場から面白いと思って紹介する次第。

なお、この記事は連載の1回目で、この後もISDに関する数本の記事が続いている。後続の記事についても翻訳して紹介したいと思う。

不当なことで利益を得る(1)

災難の怪物ISDの実体について

[情報共有と知的財産権]さらに多くの戦争、さらに多くの危機、さらに多くのISD

Byクォン・ミラン/情報共有連帯IPLeft/2013年1月23日、6:16 PM

敗訴しないことを望んだ空しい期待

昨年、ローンスターは結局ISD(投資家国家訴訟)を提起した。韓米FTAかっぱらい批准ほどではなくても、私は恐くてどきどきしながら韓国政府が敗訴しないことを見守っていた。

そして最近では医薬品特許をめぐりISDが提起された。昨年11月、超国籍製薬会社のリリーはカナダの特許適格性(patentability)の基準により、自社の注意欠如多動性障害(ADHD)治療剤のストラテラ(Strattera)の使用方法特許(methodof use patent)が無効と決定されたことで、最低1億カナダドル(CDN)にあたる損害を受けたと主張して、NAFTA協定11章(投資)により、カナダ政府に仲裁意向書を通知した。

リリーは1996年1月にストラテラの特許を申請し、2016年1月に満了する予定だった。リリーが獲得した特許(735 patent)は化合物アトモキセチンを成人と子供の注意欠如多動性障害(ADHD)の治療のために使用(use)することについてのものだ。そして2004年12月にカナダで販売許可を受け、商業的に成功したという。

ジェネリック(複製薬)を作る製薬メーカーのノボファーム(Novopharm)が特許無効訴訟を提起し、これにより2010年9月に連邦裁判所は無益(inutility)等の理由で特許無効と判決した。リリーは連邦裁判所の決定に控訴し、その結果、2011年7月に連邦抗訴法院はこれを棄却した。リリーは大法院に上告申請したが2011年12月に棄却された。

WTO加入国に対し、知的財産権保護の最低の基準を強制するトリップス(TRIPS)協定は、特許適格性の基準として新規性(new)、進歩性(inventive step)、産業適用可能性(capable of industrial application)を要求する。

つまり、既存のものとは違う新し、さらに良い発明でなければならず、その発明を発明者一人が利用するのではなく、産業的に利用する可能性があれば特許権を与えられる。

だがこの三つ基準の概念について、トリップス協定は具体的に定義していないため、国家ごとに解釈が違う。これはトリップス協定が認める数少ない柔軟性(flexibility)あるいは主権の領域の一つだ。

だがリリーは、カナダのすべての司法的手続きを取って特許無効判決を受けたが、これこそNAFTA協定11章(投資)の収用条項、最低基準待遇条項、内国民待遇条項違反だと主張した。リリーはカナダ裁判所がストラテラの特許を無効化したのは直接受け入れに該当して、これによってストラテラを製造、販売する排他的権利に関する価値(value)を破壊する効果をあげたとし、これを間接収用と見た。

実際、投資条項は投資家の解釈次第で司法権を侵害する。そして保健、環境、労働などの目的による国家の政策や制度もISDを避けられない。

だがNAFTA協定はISDを認めているので、もう元に戻すことはできない。私はカナダ政府が敗訴しないことを願っていた。ところが昨年11月に発表された研究報告書「不当なことで利益を得る-ローファーム、仲裁者、金融業者が投資仲裁ブームを煽る方法(Profiting from injustice. How law firms、arbitrators and financiers are fueling an investment arbitration boom)」を読んで、私の期待が空しいことこの上ないことを知った。


民主弁護士会のISD関連記者会見資料写真(写真は民主弁護士会)

「投資仲裁産業(arbitration industry)」の成長

2011年末までにISDを含む協定は3000本を越える。主に二国間投資協定(BIT)で、FTAに含まれる投資部門、そしてエネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)のような多国間協定がある。

世界銀行傘下にICSID(国際投資紛争解決センター)ができてから30年経った1996年まで、38件のISD提訴しかなかった。だが90年代後半から訴訟が急速に増えた。2011年末までにわかっているISDだけで450件あった。主に南半球の政府を対象にするものだ。だがほとんどの訴訟が秘密裏に行われたため、実際の訴訟件数ははるかに多いだろう。

2011年にアメリカの弁護士雑誌(American Lawyer magazine)の報告によれば、最低1億ドルになる非公開の投資仲裁訴訟は151件だった。

一般的に投資仲裁手続きは、投資家が政府に仲裁意向書を通知すると、投資家と政府は仲裁裁判所を選び、それぞれ1人ずつの仲裁者を選んで共に議長を選択し、仲裁判定部が構成される。

秘密裏に本訴訟が進められ、3人の仲裁者が被害の類型とその規模、賠償金を決める。政府が賠償金の支払いを拒否すれば、政府の財産を差し押さえることができる。

一番よく選ばれる仲裁裁判所はワシントンにある世界銀行傘下の国際投資紛争解決センター(ICSID)、二番目は国連国際貿易法委員会(UNCITRAL)だ。この他にハーグにある常設仲裁裁判所(PCA)、ロンドン国際仲裁裁判所(LCIA)があり、パリの国際商業裁判所(ICC)とストックホルム商業裁判所(SCC)はビジネス機構での投資紛争を扱う。これらは「投資紛争産業」になった。

賠償金額だけでなく、仲裁者、証人、専門家、弁護士に支払う法務、行政費用そのものがとても高い。OECDは情報が伝えられている事件の法務費用が平均800万ドルを越え、場合によっては3000万ドルを越える場合もあることを確認した。

フィリピン政府はドイツ航空会社のFraportが提起した2つのISDを防御するために5800万ドルを使った。これは12500人の教師1年分の賃金にあたり、380万人の子供に結核、ジフテリア、ポリオなどの予防ワクチン接種費用で、2つの空港を作れる金額だ。

ある仲裁産業内部の者は、法務費用の80%以上を諮問に使っていると推測する。仲裁弁護士は勝訴せず、有利な合意を引き出しただけでも相当な手数料を受け取る。上位20の仲裁ローファームのパートナー弁護士は、時間当り1000ドル受け取る。

米国のローファームKing&Spaldingは、ある訴訟で依頼人に賠償金1億3300万ドルの80%以上を要求したと伝えられる。仲裁者もまた一日の手当て3000ドルに加え、移動、居住費を受け取る。訴訟で負けた側がいつも相手側の法務費用を払うわけではない。両者に裁判、行政費用をそれぞれ支払えという仲裁判定が行われるケースが一番多い。この話は政府が訴訟で勝っても納税者は金を払わなければならないということだ。

Plasma Consortiumのブルガリアに対する訴訟で、ブルガリアは結局詐欺だという判決になったこの訴訟を防御するために約1300万ドルの法務費用を使った。だが仲裁判定部はPlasma Consortiumにブルガリアの法務費用のうち700万ドルだけを支払うよう命令した(ブルガリアはこれさえ全額を回収できなかった)。当時、ブルガリアは看護師の不足による保健医療危機を解決しようと努力していた。その金があれば、1796人以上の看護師の賃金を支払うことができた。

しかし財政的な負担は始まりでしかない。こうした訴訟ブームから利益を得る法的産業がある。この報告書は「投資仲裁産業」の主な行為者であるローファーム(仲裁弁護士)、仲裁者、金融業者(資本家)の行為とネットワークの実状を見せ、これにより国際投資体制がいかに維持され、拡大しているかを見せる。

投資仲裁産業は、単なる国際投資法の受動的な受恵者ではなく、とても積極的な行為者だ。彼らは超国籍企業と強い個人的、商業的なきずなを持ち、国際投資体制を活発に防御する学界で顕著な役割を果たす。

政府を訴訟にかけるすべての機会を追うだけでなく、国際投資体制のいかなる改正にも反対する成功的かつ強力なキャンペーンを行なっている。政府(あるいは納税者)が敗訴しなくても損害で、敗訴すればなおさら損害だ。

地球的、国家的危機はISDの機会

国連は、ISDが財政、経済危機に対処する政府の能力を深刻に阻害することを認めた(UNCTAD. 2011)。アルゼンチンが2001年に経済危機に対処するための経済改革プログラムを行ったところ、40件以上の訴訟を受けた。2008年末までに12件のISDについての判定を受けた結果、アルゼンチンが支払う賠償金は11億5千万ドルにのぼった(Luke Eric Peterson. 2008)。これはアルゼンチンの15万人の教師、または10万人の医師の年間平均賃金にあたる。

ギリシャが財政危機を迎えると、仲裁弁護士は企業にISDをけしかけた。ドイツのローファーム、Lutherは、依頼人に借金を返すことを敬遠する国家では国際投資協定を基盤として訴訟をすることができると話した。そして「ギリシャの淫らな財政的処身(Greese's grubby financial behaviour)」は、気分を害した投資家に賠償金を要求する確実な理由を提供すると提案した。

米国のローファーム、K&L Gatesは2011年10月依頼人のための要約報告書でアルゼンチンに対する仲裁訴訟の一つを分析し、次のように書いた。投資協定仲裁は、「政府の債務不履行による投資損失の被害を回復させられる」、「現在の財政危機が世界的になれば、債務機関による構造調整により損害を受ける投資家に希望を提供しなければならない」。このローファームはギリシャを投資協定により、投資家の投資を保護できるかどうかを調べなければならない国家だと認識している。

また、ローファームは依頼人が政府との負債構造調整交渉で「交渉の道具」としてISDを利用し、政府を威嚇するべきだと提案した。米国のローファームMilbank、オランダのローファームDe Brauw、英国のローファームLinklatersはすべて同様の方針を持っている。2011年にMilbankのパートナー弁護士の収益は250万ドルまで上がったが、ギリシャの25歳以下の労働者の一か月の最低賃金は510ユーロ(660ドル)だった。_ 2012年3月にEUとギリシャに金を貸した銀行、ファンド、保険者は、長い交渉の末にほとんどが償還期間を緩和することに決めた。しかしすぐいくつかのローファームが債務スワップを受け入れることを拒否し、融資機関の代わりに数百万ドルの損害賠償を要求すると発表した。

ギリシャの負債危機に対する訴訟は、非常に収益性が高い投資仲裁ビジネスの一例でしかない。2011年にリビアに内戦が発生した時、ローファームは超国籍コミュニティに対し、リビアでの彼らの利益を守る方法についての広告を出した。

英国のローファームFreshfieldsは「設備と個人の安全と保安に関して」リビア政府が約束を守れなかったことについての金銭的補償を請求するために投資協定を利用することができると提案した。米国のローファームKing&Spaldingも、2011年5月に「リビアの危機:石油会社とガス会社に有効な法的選択肢は何か(Crisis in Libya:What legal options are available tooil and gas companies?)」というの題名の『依頼人警報(client alert)』を発行し、リビアの石油、ガス会社にISDへの関心を高めた。

保健、社会安全、環境、労働政策は高価なビジネスチャンス

仲裁弁護士にとって、公衆保健、社会安全、環境、人権を保護する政府の規制は収益性の高いビジネス機会だった。ドイツのローファームLutherは「助けて。収用される!(help、I am being expropreated!)」というの題名のブローシャーで、投資仲裁の機会として新しい税金、新しく導入された環境法、政府規制により下げされた価格などのシナリオを広報した。

ハンガリーが2011年に莫大な公的負債を減らすために収益性が高い企業に税金を導入すると、米国のローファームK&L Gatesは企業が選択できる投資仲裁を提案した。インドが2012年3月に抗ガン剤のネクサバールの薬価があまりにも高いため、強制実施を発動すると、米国のローファームWhite&Caseは特許権を持つ超国籍企業に「BIT下で安息所を見つけるだろう」といった。

スウェーデンのエネルギー企業、バッテンフォール(Vattenfall)がドイツ政府に訴訟をしたのも同じだ。2012年の福島原発事故の後、ドイツ政府が原子力エネルギーを段階的に廃止することに決めると、37億ユーロ(46億ドル)を要求してISDを提起した。

ドイツのアンゲラ・メルケル政府は2010年に原発の段階的廃棄方針を変更し、古い原発の運転期間を8〜14年延長した。バッテンフォールはドイツ政府の当時の決定を見た後、ドイツ、ハンブルグ付近の原発に7億ユーロを投資した。

しかし、メルケル総理は2011年3月、日本で福島原発事態が起きると既存の政策をひっくり返し、二つの原発を含む8つの原発を直ちに閉鎖し、2022年までにドイツ内の原発をすべて閉鎖することにした。

これに対し、バッテンフォールは自分たちの投資がすべて吹き飛んだと主張してISDを提起したのだ。バッテンフォールは、エネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)の「国家は投資家に対し公正で公平な待遇をしなければならない」という条項を今回の原発訴訟の根拠とした。これは、韓米FTAにも含まれている。

バッテンフォールは2009年にもハンブルグ・モーアブルクの石炭火力発電所に対するドイツ政府の環境規制に対し、14億ユーロ(19億ドル)の賠償金を要求し、エネルギー憲章条約を根拠としてICSIDに提起し、2010年にドイツ政府の賠償を受け取ったことがある。

オーストラリア政府は世界保健機構(WHO)の勧告を受け入れ、タバコの箱にブランドごとにデザイン、色、ロゴを表記せず、薄緑の箱(generic olive green packets)に製造会社・商標名を小さな文字で表記し、口腔癌、視力を失った眼球のように喫煙関連の病気の写真と共に警告の文句を大きな文字で表記させる法律を制定した。


オーストラリア議会の禁煙法決定で推進されたタバコの外箱の模型。これにタバコ会社は訴訟で対応した

2011年11月にこの法案が通過すると、香港のフィリップ・モリス・アジアは香港オーストラリア投資協定(BIT)を通じてISDを提起した。そして2011年12月にはフィリップ・モリス、ブリティッシュアメリカ・タバコ(BAT)、ジャパン・タバコ、インペリアル・タバコの4社が、オーストラリア政府の措置は知的財産権(商標権)を侵害し、違憲の可能性があるとし、オーストラリア高等法院に訴訟を提起した。2012年8月15日、オーストラリア大法院は合憲と判決した。だがISDは進行中だ。フィリップ・モリスはカナダのタバコ規制政策に対してISDを提起すると威嚇し、カナダのタバコ規制政策を無力化させている。

南アフリカ共和国の長い間の人種差別制度による不平等を是正するために、2004年1月、大統領は黒人経済育成法(Black Economic empowerment Act)に署名した。黒人が経済活動に参加する機会と恩恵を保障するため、企業に対し黒人管理者の割合、黒人の所有限度、黒人労働者の割合などを基準として点数を付け、政府の入札や銀行融資を優先的に支援する制度を用意した。

これに対して2007年にイタリアの鉱山会社Piero Forestiをはじめ、多くの企業が南ア・イタリアBIT、南ア・ルクセンブルクBITを通じ、ISDを提起した。南ア共和国の政府がこれらの企業に新しいライセンスを与えることで合意した後、2010年8月に仲裁が終了した。

このように、ローファームは国家に対して訴訟をするあらゆる機会を探す。企業に対し、訴訟の機会についての情報を絶えず知らせることは、仲裁弁護士にとっては一番基本的な仕事だ。戦争や経済危機のような地球的、国家的な危機状況は、仲裁弁護士が利益をあげる機会になる。

そして、保健、環境、労働政策さえISDを避けられないのではなく、むしろこうした公共政策が仲裁弁護士にとってはIDSの最優先の対象だ。だが投資家がISDを提起した時、勝算があるか、少なくともISDを提起することが利益につながる構造があるからこそ、「投資仲裁産業」がこのように成長できたのだろう。なぜ可能なのだろうか?

原文(レディアン)

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2013年1月23日水曜日

積層セラミック・コンデンサ

何気なく古いパソコンから外した安物のサウンドカードを眺めていて気がついた。
ふとそれなりのオーディオ回路なら普通に使われているようなフィルムコンデンサーがない。どうやらコンデンサーはすべてチップコンデンサーを使っているらしい。何も表記がないのでわからないけれど、おそらく積層セラミックコンデンサーなのだろう。
オーディオ回路にセラミックコンデンサー?
ちょっとショックだった。いくら安物のサウンドカードとはいえ、オーディオ回路にセラミックコンデンサーとは。

実は以前、音質は二の次、とにかくブーストという程度のちょっとしたマイク用プリアンプのカップリングに積層セラミックを使ったことがあって、「結構使えるじゃん」とか思ったことがある。それでもオーディオ回路にはフィルムコンデンサーというのは常識で、セラミックなんて使ったらキンキン変な音になるもんだと思い込んでいたのだけれど、パソコンのサウンドカード程度のクォリティなら積層セラミックでも何とかなるということか。

調べてみると、最近の積層セラミックはそんなに特性は悪くないらしい。うるさいことを言わなければ、オーディオ回路でも使えないわけではないらしい。
ぼくはソレっぽい音が鳴ってれば満足してしまうので、フィルムコンデンサがなければ積層セラミックでもいいような気がしてきた。ただ、セラミックコンデンサの欠点は、バラツキが大きいことで、昔、「セラミックコンデンサの容量なんて2倍ぐらい違うこともあるよ」なんて話を聞いた覚えがある。音楽を聞く場合だと、左右のチャンネルのコンデンサーの容量があまり違うと音質や音量、特性のバランスの違いにつながってしまう。これはあまり気持ちのいいものではない。

部品箱の中の積層セラミックの袋を見ると、容量の誤差は+80%、-20%と表示されているのだが、本当にそんなに違うのだろうかと思って、容量を測ってみた。もっとも、容量計なんてしゃれたものは持っていないので、NE555で発振器を組んで、1000円のデジタルテスターの周波数計レンジで周波数を測って、そこから容量を逆算してみた。
0.1uF表示の積層セラミック10本ほどを測ってみたところ、意外にも容量のバラツキは小さく、0.99から1.1ぐらいまでだった。これをバラツキが大きいと言えば大きいんだろうけど、おそらく、もっとたくさん測れば、中には+80%ぐらいのものもあるんだろうね。
もっとも温度による容量変化が大きいのは教科書通りで、指で温めるだけで10%ぐらいは簡単に変動する。夏と冬で音質が変わるアンプなんて、オーディオマニアにはとても許せないだろうけど、ぼくは左右のチャンネルが同じように変わるんだったら10%ぐらいは許容範囲内だ。

いつか、フィルムコンデンサとセラミックコンデンサを差し替えて、どれぐらい影響があるものか実験してみようかなと思う。

2013年1月7日月曜日

「靖国放火犯」の本国送還

韓国の日本大使館に火炎瓶を投げた中国人が、靖国神社の門に放火したという容疑で、日本側が日韓犯罪人引渡協定により身柄の引渡しを要求していた件で、韓国政府はこれを拒否し、容疑者を中国に帰国させた。日本政府は 「『(日韓犯罪人引き渡し条約を)事実上まったく無視した』と批判」したという(日経の記事)。「事実上」という単語がついているあたりが面白い所で、「まったく無視した」と断言することはできないということだろうか。
報道によれば日本政府は「今後、『政治犯』の定義などの見解について、韓国側に明確な回答を求める」という。すると日本は韓国での裁判所の決定書も検討せずに「事実上まったく無視した」と非難しているということになり、それはそれで問題がありそうな気がする。ただし、この裁判については日本政府関係者や報道関係者は綿密にフォローしていたようだけど。

このあたりが気になったのでいろいろ調べてみたのだが「靖国放火」が政治的犯罪かどうか以上に、「靖国放火犯」の存在そのものが政治的な存在になってしまっている。いや、そもそも「靖国」という存在が政治的な存在なので、必然的にそれを取り巻くすべての事件は政治的な事件になってしまう。
しかし、今回の引渡し拒否については特に、日本が放火容疑者の劉さんの引渡しを要求したあと、中国が国を挙げて劉さんのサポートにまわったという点で国際的な政治問題になってしまった。今回の裁判では中国政府が韓国有数のローファームと契約して韓国最高の弁護士を何人も雇い、劉さんの弁護をさせたという。日本政府は、日本大使館放火事件で逮捕された容疑者が靖国放火を自供して以来、何度も韓国政府に容疑者の身柄引渡しを要求してきたという。そして中国政府は、彼は政治犯であり、中国に送還するようにと求めたという。朝鮮日報のコラムによれば、中国の公安関係者が日本の要求に応じれば深刻な外交問題になると脅しをかけたという。ちなみにこのコラムは送還決定前に書かれたものだが「弁護人は送還が決定されると信じている」と書いている。
いずれにしろ韓国外交部は、日本と中国の板挟みになって、どっちに引き渡しても反対から非難され、外交的に苦境に陥ることになってしまった。

韓国政府は、政府としての判断をせず、司法に判断を丸投げして司法判断に従う、という手を使ったわけだが、韓国の報道によれば、韓国の裁判所は、判例もない裁判で苦労したそうだ。豪華弁護団がついていなければ、引渡しの決定が出ていたかもしれない。とにかく裁判所は海外の事例や学説などを検討して、「絶対的政治犯罪」、「相対的政治犯罪」のうち、今回の件は「相対 的政治犯罪」にあたるとし、これが一般犯罪なのか、政治犯罪なのかの判断の基準として、(1)犯行の動機が個人的か政治的か、(2)犯行の目的がその国の 政策を変化させようとするものか、(3)犯行の対象が象徴するものの政治性、(4)犯行と政治的目的に有機的関係があるか、(5)犯行の法的·事実的性 格、(6)犯行の手段、あるいは方法の残虐性の六項目を設定、これについて検討した結果、「政治犯罪にあたる」という結果を出したという。
なお、弁護団は劉さんが日本に引き渡された場合、政治的な差別を受ける可能性があるという主張をしていたが、これについては政治犯罪の判断基準には含まれ なかった。

ぼくは法律には疎いので、日韓のどちらの主張が正しいのか判断することはできないのだけど、ネットなどで見かける「放火やテロを奨励するような内容」(産経)といった雑な議論ではない。
また差別の可能性や政治的裁判の可能性を判断基準にすると、日本の司法が信頼できないという意味になって、外交上の大問題に発展しかねないからなのだろうが、日本では天皇だの靖国だのがからんだ裁判は被告にとって相当不利になるのは明らか。日本政府は「一宗教施設への単なる放火犯であって政治犯ではない」と主張しているが、反靖国運動などへの超法規的な弾圧を考えれば、靖国放火犯が「単なる放火犯」として扱われるとは思えない。これは中国政府としての立場でも同じで、「単なる放火犯」ではないと見ているからこそ国家的にバックアップしているわけだ。

ところで韓国の裁判所は、劉・元受刑者の認識と見解は大韓民国憲法の理念や国際機関、大多数の文明国が目指す普遍的価値と一致していると判断したという。これはいかにも韓国的だなと思う。ぼくの主観的な印象なのだが韓国の裁判では、大義や法の理念といったものが重視され、情状酌量の余地も日本より広いように思う。悪く言えば、最後まで頑張って世論を味方に付ければ勝ち、みたいなところがある。おかげで法による救済が困難なケースでも救済されるという肯定的な結果になることもあり、逆に法で処罰されるべきケースでもうまいこと逃げてしまうという否定的な結果になることもある。韓国では、有能な弁護士を雇える金持ちは裁判にかけられても無罪になり、弁護士が雇えない貧乏人は有罪になるという「有銭無罪・無銭有罪」という言葉があるほどだ。
今回の引渡し拒否の決定も中国政府のバックアップを得たおかげで、「有銭無罪」になったケースだと言えるのではないかと思う。

世界のそれぞれの国にはそれぞれの制度があり、正義がある。急速なグローバル化は、そんなそれぞれの国の事情を平準化しようとしているのだが、それはそれでまた問題の火種になる。最近話題のTPPのISDS条項も、国によって異なる制度の問題を解消しようとする試みの一つで、日本でもこれを問題視する人は少なくない。同時に、グローバル化は何らかの共通の価値観を必要としているのも事実で、韓国の中でも今回の件で容疑者の引渡しを拒否したことは国際条約の理念から見て正しくないという意見もある。実際、韓国政府としてはどうやら容疑者を引渡したかったように見受けられるが、その場合に予想される対中国関係の悪化や国内的な反発で悩んだようだ。
ちなみに、欧米の反応を調べてみたが、欧米人が書いたと見られる英文のブログでは「日本に引き渡すべきだった」という文章が数件見つかったものの、主流メディアはこの件については単に事実を伝えているだけだ。どうやら日本政府が考えているほど「(日韓犯罪人引き渡し条約を)事実上まったく無視した」というようなものでもなければ、韓国政府が望んでいるように純粋な司法判断として処理できるようなものでもないということではないと解釈することもでき、「また日韓がバカみたいな綱引きをやってるし…」という無関心の現れなのかもしれない。

結局、この種の問題を解決する方法は、相互の理解と信頼でしかない。そして相互の理解と信頼がなければ、「一宗教施設への単なる放火」が国際的な外交問題になってしまう。そして韓国も中国も、少なくとも靖国や従軍慰安婦といった問題に関しては、全く日本政府の主張について理解も信頼もしていない。そして日本は韓国や中国の態度に不信を募らせるばかりだ。
こうした日中韓の三か国の不信と感情的なギャップは、戦争責任があり、アジアで最も進んだ民主的国家だと自慢する日本が率先して埋める努力をしなければ、永遠に狭まることはないだろう。中国や韓国を「遅れた国家」だと考えている人も少なくないようだが、それほど誇り高い日本が中国や韓国と同じレベルで「お前が悪い」、「そっちこそ何だ」といがみあっているようでは、まあ、何ともみっともない話である。今の段階で、韓国や中国が納得できるような努力をすることができるのは、安倍首相だけなのだけどねえ…

2012年12月24日月曜日

バターコーヒー

コーヒーにバターを浮かべて飲む。

ちょっと異様な取り合わせのように感じるかもしれないけれど、考えてみればバターは生クリームの脂肪分を固めたものなのだから、成分的にはコーヒーにクリームと似たようなもの。怖がる必要はない。

バターコーヒーと言っても特別なものではない。普通にいれたコーヒーに好みの量のバターを浮かべるだけでもいい。バターの量は好みだけれど、あまりたくさんいれるとバタ臭くなる。個人的にはバターをひとかけ2-3g程度に、砂糖をひとさじぐらいが好み。

ちょっと本気でおいしいバターコーヒーが飲みたければ、深煎りにしたブラジルやマンデリンなどの苦味が強いコーヒーを少し濃い目にいれて、できるだけ上等な無塩バターを浮かべる。

パンに塗るような普通の有塩バターを使うと、バターに含まれる塩分がせっかくのコーヒーの風味をぼやかしてしまう。だからここは、ぜひとも上等な無塩バターを使いたい。すっきりしたバターの脂肪分がコーヒーの風味をそこなうことなく、苦味の角を丸くしてマイルドな味わいにしてくれる。

だけどバターコーヒーの本領は、たぶんそんな上品な飲み方じゃなくて、コーヒー好きが「こんなもの、飲めたもんじゃない」と放り出すようなワイルドな味がする安物の豆でいれたコーヒーに、そこらのバターを浮かべたものなんじゃないかと思う。この仮説はマンデリンも無塩バターも高いから買えない、という貧乏人(オレのことだ)に支持されるはずだ。

この場合、できるだけ安い深煎りコーヒーに、普通の有塩バターをたっぷりと浮かべる。上等なコーヒーと無塩バターの組み合わせのときよりもバターはたっぷり、ちょっとバタ臭いかなと思うぐらいが適量だ。
コーヒーのお勧めは、スーパーで安く売ってる焦げた麦茶みたいな味の「アイスコーヒー用ブレンド」だ。粉からいれるのがめんどくさければ、安いインスタントコーヒーでもいい。とかにく安物のコーヒー豆やインスタントコーヒーにたっぷり配合されているロブスタは、雑味が多く、ロブ臭さといわれるような特有の味がするので「まずい」と言われるわけだけど、バターの塩分は、このロブスタの雑味を殺し、脂肪分が安っぽい味をまろやかにしてくれる。そしてロブスタがそれなりに持っている独特の風味と、たっぷり入れたバターのコクと香りが絶妙にマッチして、なかなかいい感じになる。

ところで、バターとコーヒーの組み合わせには、いろんなバリエーションやアレンジがある。

ぼくは飲んだことがないのだけれど、一部で流行っているらしいのが濃い目のコーヒーに無塩バターを入れ、さらにココナッツミルクを入れてガーッとかき混ぜるというレシピ。たぶん、それなりにおいしいんだろうけど、普通のバターコーヒーは「コーヒー」の範疇に入るとしても、ココナッツミルクを入れちゃうとアレンジコーヒー、フレーバーコーヒーの範疇になるんじゃないかと思う。コーヒーというより「コーヒー飲料」じゃないのかなあ。あまりアレンジコーヒーには興味がないなあ。

独特の器具を使うベトナムコーヒーで有名なベトナムでは、しばしばコーヒーを焙煎する時、あるいは焙煎後に熱いコーヒーにバターをからませるという。ベトナムのバターというのがどんなバターなのか知らないけれど、おそらく普通の有塩バターではないかと思う。ちなみに、ベトナムはフランスの植民地時代が長かったので、パンの味は日本のパンよりはるかに上だとか。バターもおそらくフランスパンにつけて食べるような種類の有塩バターだと想像する。
バターを使った焙煎は、上述のように塩分がコーヒーの雑味を隠してマイルドにしてくれると同時に、表面にからんだ油脂分によりコーヒーの日持ちがよくなるんだそうだ。
インターネットを検索してみると、日本にも焙煎後にバターをからませたコーヒー豆を売りにしているコーヒーショップもある。コーヒー専門店なら、おそらく無塩バターを使っているんだろう。飲んだ人に聞いてみると、「全然普通においしいコーヒーだよ」とのことで、バターを浮かべたコーヒーとは違う味らしい。

余談ながら、寒い時のバターコーヒーは体が温まっておいしいという。余談ついでにアイリスという韓国ドラマの中で、主人公が雪山の中で女スパイにバターコーヒーを飲ませてやる、という場面が印象的だった。ただ、ギョッとするほどたっぷりバターを入れていて、「おい、そりゃ入れすぎだろ…」とか思ったけど、映像的にはワイルドにバターナイフでざくっとすくってベトッと入れなきゃ、カッコつかないんだろうなあ。山小屋にバターがあるという設定もアレだし、極寒の山小屋のバターがあんなに柔らかいわけないだろ、とか、違和感満載の場面ではあったのだけど、まあ韓国ドラマなんてそんなもん。

ところで、有塩・無塩にこだわるようだけど有塩バターの塩分含有量は海水の塩分濃度に近い3%程度だという。食品の塩分としてはかなり濃度が高いのだが、パンに塗った時においしい濃度らしい。
話はバターからそれるけど、まずいコーヒーに塩を入れておいしくする、という技がある。

コーヒーに塩なんて、と思うかもしれないけれど、ここまでのバターコーヒーの話を読んだ人なら納得できると思う。スプーン一杯のバターに含まれる程度のわずかな塩分は、安物のコーヒーの雑味を隠す効果がある。バターコーヒーの塩分は、塩分3%りバター5gなら、150mg程度だ。
いうまでもなく、上等なコーヒーでこれをやると、せっかくのコーヒーの特徴をぼやかしてしまい、逆効果になる。
以前、イタリアのコーヒーを調べていた時に、マキネッタの上のカップにぱらっと軽く塩を入れるというのを読んだことがある。安いイタリアン・エスプレッソの粉を使うんだったらこういう手もありそう。

2012年12月23日日曜日

韓国の大統領選挙

韓国の大統領選挙は結局、「独裁者の娘」で「初の女性大統領」の与党セヌリ党の朴槿惠が、野党民主統合党の文在寅を破って当選した。

選挙戦は、早くから立候補を決めていた朴槿惠有利という雰囲気の中、昨年のソウル市長選挙で市民候補の朴元淳を勝利に導いた安哲秀の動向が注目されていた。野党圏はぎりぎりまで候補の一本化がまとまらなかったが、結局、最終的に安哲秀が文在寅支持を表明、一気に野党候補の支持率が高まった。そして選挙前の世論調査では、与野の支持率の差は5%程度にまで縮まり、投票日に突入することになった。

結果は与党の勝利となったが、もし、野党側がもっと早くから候補の一本化に成功していれば、または最終的に安哲秀で一本化していれば、異なる結果になった可能性は高い。しかし歴史にIFはないという。野党候補一本化の遅れには、それなりの理由があった。選挙に敗北したのはあるいは必然だったのかもしれない。

個人的な見解だが、今回の選挙の結果は、与党の周到なイメージ戦略が功を奏したこと、野党は親盧派の傲慢や、改革を望む声を受け止められなかったこと、盧武鉉政権の失敗を清算できないまま親盧派の候補で選挙に突入したことなどが大きな要因になったと考えている。簡単に言えば、与党は民心が求めているものを鋭く読み取り迅速に対応したのに、野党や進歩陣営は、古い観念に囚われて民心を読み誤ったということだ。

社会秩序を重視する保守系政権が続くことになり、今後さまざまな社会運動への締め付けが強まることはあっても、決して弱まることはないだろう。しかし韓国の左派勢力にとって、今回の大統領選挙での敗北が意味するものは、単にまた五年間を保守政権の下で暮らさなければならないということだけではない。元々、労働運動などの中でも左派に属する勢力は、リベラル保守の野党候補には大きな期待は抱いていなかった。しかし4月の総選挙の前に、民主労総が支持していた民主労働党が親盧派非主流派の参与党と共に作った統合進歩党が内部的な問題で分裂したことから、左派勢力間の対立は修復不可能な状態になり、大統領選挙への対応で方向性を打ち出せないまま幹部をはじめとする有力者のグループが個別に動いた。そして大統領選挙での野党の敗北が、こうした分裂状態にとどめを刺した形だ。民主労総が掲げる労働者政治勢力化の方針が大幅に後退したばかりでなく、組織の求心力の低下、政治的発言力の低下で現場の闘争や労働運動全般への影響も避けられない。

では今回の与党勝利につながった韓国の民心とは何だったのか。とても一言でまとめられるようなものではないが、社会全体の保守化、古い対立の政治への嫌悪、有権者の要求の変化などがある。これらの要因について、ここでは特に「外国人」の立場から見た韓国の社会状況と、その選挙への影響について書き留めておくことにする。なぜなら、今回の韓国の大統領選挙をめぐる過程は、日韓で具体的な現れ方は違っても、日本の状況に通じる部分がある。グローバル化する経済の中で、地理的にも歴史的にも近い関係にある日韓両国が置かれた状況を、韓国の大統領選挙というフィルターを通して振り返る材料になると思う。

■若年層の政治意識と脱イデオロギー

今回の選挙は、リベラル指向が強い若年層の投票率が勝敗を左右すると言われていた。若年層の投票率が上がれば野党有利、低ければ与党有利と言われていた。実際には、若年層の投票率もそれなりに高かったのだが、むしろ保守的な指向が強い中高年層の投票率が上がったことで、保守系候補の勝利につながったと言われる。まず若年層の意識について分析してみよう。

日本から見ると、韓国の若年層の政治意識や社会意識はずいぶん高いように見えるが、韓国人に聞くと「そうでもないよ」と言う。考えてみれば、韓国人は日本人よりおしなべて政治意識が高い。韓国的な基準からすれば、若年層は政治意識が「低い」ということらしい...のだが、本当だろうか。

既存の韓国の政治活動家にとって「政治」とは、極端に言えば、たとえば南北統一、反米自主、民主化、社会主義といった分野の用語を駆使し、「悪い権力」に身をもって立ち向かうことだった。だが「反米自主」だの「労働解放」といった言葉は、政治的な民主化を勝ち取り、経済的にも豊かになった今の韓国の若い世代には以前ほど響かない。特に韓国では国是のような「統一」に対しても若年層の反応は冷めている。以前のような左翼的なスローガンへの反応も鈍く、韓国の厳しい資本主義社会の現実の中で必死に生き残ろうとする若者たちには、時として「保守化」というレッテルが貼られたりもする。

もちろん、分断国家の韓国は、21世紀になった今も古い冷戦構造の中にあり、そして韓国の労働者たちは今も厳しい労働搾取にさらされている。それで既存の韓国の政治活動家たちは、どうすれば若い人たちに「政治」に関心を持ってもらえるのかと一生懸命に考える。だが2008年の大キャンドル集会や2011年の希望のバスなど、韓国の若い人達は既存の活動家が思いもよらない方式で大量動員を実現したことを目の当たりにして、古い活動家は頭を抱えた。これらの新しい社会運動は、旧来の左右の理念的対立や運動の方法論の枠組みから大きく外れていたからだ。

「保守化」は単に若年層ばかりではない。韓国全体が保守化している。その中で、若年層は既存の「保守か進歩か」という政治的議論の枠組みに対する関心が薄いのは事実だろう。それを政治的意識の低下と認識すべきではなく、古い進歩的スローガンに反応しないことを保守化と認識することも正しくない。それは単に進歩陣営が、人々の共感を呼ぶような新しい進歩的議題の提出に失敗しているだけなのだ。

ところでキャンドルデモのような韓国の若年層の最近の社会的・政治的な活動についてはさまざまな議論があるが、ある韓国人の活動家は「結局、オレたちの時代の運動はそろそろ寿命なのかもしれない」、「オレたちがするべきことは、彼らに運動を教えることではなく、彼らの方式の運動を認めて、彼らを支えることなんだろうな」と言っていた。

■進歩の衰退

韓国はこの数十年間に大きく政治的構造が変化し続けてきた。1980年代後半まで続いた軍事独裁、その後の盧泰愚、金泳三の一定の民主化の過程を経て1990年代後半にリベラル保守指向の金大中は事実上、韓国の民主化を確立したといっていいだろう。それに続く盧武鉉は政治的には左派色が強まったが、李明博で保守に回帰した。

さて、韓国進歩勢力の衰退を語る前に、韓国の左派、あるいは進歩勢力の構造を整理しておきたい。韓国の「進歩」を日本でいう「左翼」の概念で理解すると混乱しかねない。

韓国の進歩は、反独裁・民主化運動という大きな流れの中に、反米・南北統一を目指す統一運動の流れ、労働組合を中心とする労働運動の流れなどがある。それぞれの流れは矛盾するものではなく、時には協力し合い、時には独自の色を強めながら今に至っている。

今回の選挙で文在寅を擁立した野党の民主統合党は、本流の金大中の流れをくむリベラル系保守政党だが、さらに急進的な主張を掲げる統合進歩党、進歩新党などがある。無理を承知であえてレッテルを貼るとすれば、統合進歩党は統一運動系、進歩新党は労働運動系と言える。ちなみに、韓国での「進歩」は、日本の「左翼」に近い「急進的」というニュアンスがある。そのため統合進歩党や進歩新党は「進歩政党」と呼ばれるが、民主統合党は一般的に「進歩」とは若干の距離がある。ただし、保守系からは民主統合党内部の進歩指向の部分について「アカ」攻撃が加えられる場合もある。

しかし、こうした旧来の政治的な構造には包括しきれない層が誕生している。軍事独裁の時代は遠くなり、反独裁・民主化というスローガンはすでに聞かれなくなって久しく、南北の経済格差の開きや最近の北朝鮮の理解に苦しむ軍事的挑発は従来の方式の統一運動への関心を低下させ、二極化の弊害は高まっているとはいえ、全体的な生活水準の向上で、激しい労働運動への共感は得にくい。その中で、環境、女性・移民などの少数者、社会的格差、過度な競争、教育問題といった、従来の枠組みでは捉え切れないテーマが社会的な問題になっているが、既存の進歩政党はこれらの問題に適切な対応ができず、有権者からの支持を失いつつある。

問題の根底には、それぞれの政党が変化した社会にあわせた自己改革が進んでいないことがあると言われている。特に春の総選挙の前に、進歩を指向する政治勢力は小異を捨てて団結し、強大な与党に対抗する力をつけなければならないという統合の動きが活発になった後、統合勢力の中での主導権獲得の争いが激化し、結局は分裂してしまった。野党最大勢力の民主統合党も、大統領候補を決める過程で、盧武鉉政権を支えた「親盧派」と呼ばれる主流勢力がかなり強引に自派の候補を押し通した。親盧派の動きは、その後、安哲秀勢力との候補単一化でも問題になる。

こうした政党内部のセクトや派閥の力学を前提とする動きの中で、一般の党員や有権者の声はなかなか反映されない。そんな古臭い政治の姿を露骨に見せつけたリベラル、進歩勢力は、有権者、特に若い有権者の離反を招くことになったのだろう。

なお古い政治の枠組みという点では、今回朴槿恵候補を当選させたセヌリ党も似たようなものだが、朴槿恵は総選挙を控えて大胆な党の改革に取り組み、党名をハンナラ党からセヌリ党に変更、イメージカラーを韓国保守層が最も嫌う「赤」にすることで、大衆的に「朴槿恵のセヌリ党は以前のハンナラ党ではない」という強い印象を植え付けることに成功し、総選挙での勝利を勝ち取っている。

■「新しい政治」の台頭

最近の新しい社会問題について、各地の大学生を対象とするワークショップなどでアピールを続け、浮上してきたのが、安哲秀を中心とする勢力だ。大企業中心の社会システムの問題、それに対応できない既存の政党政治の問題などを提起して「新しい政治」を掲げる。

古い枠組みの中で特別な人たちが語る、どこか遠い世界の「政治」には関心を持たない若年層も、これまで政治が語ろうとしなかった自分たちの問題について、自分たちの目の高さから語りかける安哲秀の「政治」に熱い支持を送った。

安哲秀は医者出身のIT技術者/経営者で、ソウル大学校融合科学技術大学院院長という肩書きを持つエリートだ。韓国の社会システムの中では特権階級に属する。決して労働者や貧民を代弁できるような経歴を持つ人物ではないが、現在の社会システムがいかに不公正なルールで維持されているのか、その矛盾を身を持って知る人物でもある。

彼は政治的な経験もなく、政治的な立場や実力は必ずしも明確ではない。発表された公約を見ると、特に具体的な問題に関する部分は、やや観念的な机上のプランという印象も受ける。しかし率直な社会批判、そして特に現在の政治に対する強い批判は、若年層を中心に高い人気がある。昨年のソウル市長選挙で強力な与党候補を破り、市民活動家の朴元淳が当選した背景には、安哲秀の強い支持があった。

彼の今回の選挙での主張は、「政権交代」ではなく「政治交代」だった。古い政治の打破、古い政党の解体、そして新しい政治を訴えた。彼が提示した選択肢は、野党か与党かではなく、保守か進歩かでもなく、古い政治に安住するのか、それとも新しい政治を切り開くのかという選択だったと言えるだろう。

政治に無関心とされていた若年層が、そんな安哲秀の主張に支持を送った。与党支持者も、これまでの野党に失望した人も、そして若年層ばかりでなく、年代を超えて多くの人々が安哲秀に期待を寄せ、「安哲秀現象」という言葉まで生まれた。

■盧武鉉の亡霊

金大中政権を引き継いだ盧武鉉は、議会から弾劾されても圧倒的な支持で大統領に返り咲くほどに強く国民的な支持を受けた大統領でもあった。慶南なまり丸出しの語り口や、人間臭い性格の持ち主だった盧武鉉の人気は今も高い。今回、野党陣営はそんな盧武鉉大統領の右腕と言われた文在寅を大統領候補に擁立した。

しかし、盧武鉉政権の五年間に対する評価は交錯する。一部の支持者からは今も肯定的な評価を受けているが、一般的な評価はかなり厳しい。盧武鉉は、政治的には進歩の立場を取ったが、経済的には市場原理主義的な新自由主義経済政策を取り、それにより発生した労働争議には厳しく実力で対応した。李明博政権の初期に大規模な韓米FTA反対デモが起きたが、強い反対を押し切ってその韓米FTAを締結したのは、まさに盧武鉉政権だった。そして今回の大統領選挙の行方を決めたと言われる50代前後の世代は、まさに盧武鉉政権の新自由主義的な政策で職を失ったり、住宅価格の高騰などで経済的な打撃を受けた世代だと言われる。

「労働者の涙を拭う」と言って誕生した盧武鉉政権が、労働者を叩きのめしたのである。おそらく盧武鉉個人としては心外だっただろう。しかし政党という政治組織を基盤とする政権は、盧武鉉個人の意思とは別の力で動かざるを得なかった。安哲秀が批判する古い政党政治とは、まさにこのような政治なのではないだろうか。

盧武鉉政権の失政について、文在寅候補は率直にその失敗を認めて謝罪したが、進歩陣営にもたとえば民主労総をはじめ、盧武鉉政権の中核にいた文在寅に対する恨みともいえるような拒否感は根強いものがあった。文在寅は政権中枢での実務経験、国政運営の経験をアピールしたが、それは同時に盧武鉉政権の失政の責任を問われる理由にもなった。そして「盧武鉉の再来」を心から恐れた50代の有権者を大挙投票所へと駆り立てたのだ。

親盧派が実権を握る民主統合党やその周辺のグループとしては、親盧派への風当たりの強さは自覚しながらも、何としてでも自派の大統領を当選させ、再び権力の座に返り咲きたかったのではないだろうか。政治が権力を指向することは、ある意味自然なことかもしれないが、有権者の声を無視した政治力学の中で政治が動くことについて韓国の有権者は強い違和感を感じている。

■ノスタルジーとイメージ


与党の朴槿恵の支持層は、朴正煕時代を知る高年齢層だ。確かに独裁は過酷だったかもしれない。しかし「アカ」が引き起こした朝鮮戦争で荒廃した国土を復興し、急速に発展させた朴正煕を今なお敬愛する人々は多い。また朴槿恵は、独裁者または国家発展の英雄である朴正煕の娘であると同時に、国母とも呼ばれ親しまれた陸英修の娘でもある。朴正煕の強さと陸英修の優しさの両面を持ち、両親を凶弾で失った悲劇の姫である朴槿恵は、苦しい時代を生き抜いて今の韓国を築き上げた韓国の高齢者たちにとって特別な意味を持つ存在なのである。また若い世代の中にも、世界の最貧国レベルだった韓国を世界でもトップクラスの先進国に押し上げる基盤を築いた朴正煕時代を、輝かしい躍進の時代と考える人は少なくない。

セヌリ党の選挙戦略で見事だったのは、古き良き時代のノスタルジーを新しいイメージで包装するという徹底的なイメージ戦略を展開したことだ。前に少し書いたように、党名と党のロゴを変更し、イメージカラーも赤に変えた。韓国の保守層は、本当に赤い色が嫌いらしく、このイメージカラーの変更にはずいぶん議論もあったといわれるが、結果としてこれは成功した。もちろん「初の女性大統領」というフレーズも頻繁に登場した。多くの国民が望む旧態然とした価値観や古い政治から、少なくともイメージの上では見事に脱却してみせた。政策的な部分でも現在の韓国社会が抱える民生、福祉、雇用、学費、財閥改革といった「進歩的」政策を、巧妙な逃げ道を用意しつつ、しかし果敢に取り入れてみせた。どの程度、本腰を入れてこれらの「進歩的」政策を実行に移すのかはともかく、こうしたキーワードが公約に並ぶことだけでも、新しさを演出するには十分だったと言えるばかりか、進歩陣営が得意とするキーワード(しかしこれらのキーワードは同時に朴正煕的な復興・国づくりのキーワードに通じる部分もある)を先取りすることで、政策論争の対立点を曇らせ、イメージ的な演出の比重を高めたとも言える。

そして選挙期間中のメディア戦略も徹底していた。可能な限り好印象を与える場面を作ってマスコミのカメラに狙わせ、朴槿恵が不利になりかねないTV討論会は、可能な限り朴槿恵に有利な形で実施するようにあれこれ手を尽くしたという。テレビの報道は、陣営からの圧力があったのか、あるいは政権に弱いテレビ局の幹部が朴槿恵に媚びたのかはわからないが、常に朴槿恵が有利な形で流された。

与党はこうしたノスタルジーやイメージ戦略を駆使して、朴槿恵は強く、優しく、心の底から国民の幸福を願う大統領候補だという印象を植え付けることに成功した。

その反面、野党陣営は必ずしもイメージ戦略に成功していたとは言えない。やはり前に書いたように、盧武鉉の後継者というイメージは、過酷な盧武鉉政権の記憶を想起させ、安哲秀との候補単一化の局面では古い政治を印象づけることになってしまった。

民主統合党の問題ではないが、進歩陣営の分裂や混乱は、進歩陣営にとってはもちろんだが、文在寅陣営にもマイナスだった。今回の選挙戦で、進歩陣営があげた得点は、テレビ討論会で統合進歩党の李正姫候補が舌鋒鋭く朴槿恵候補に迫った点だ。ただしこの得点も、朴槿恵の支持者にとっては「アカ」の候補による悪意の中傷程度にしか受け取られず、得点としてカウントしたのは野党陣営だけで実際には朴槿恵に何のダメージも与えることはできなかったという評価もある。すでに「独裁 vs 民主化」という対立のイメージは、今の韓国では陳腐化してしまったのだとすれば、これを「得点」にカウントしたセンスこそが問われている。

いずれにしても、与党は緻密なイメージ戦術を展開したのに対し、野党側は誰にでもすぐに実感できる肯定的なイメージを持っていなかった。選挙の最終局面で、安哲秀が遊説先でいわゆる「人間マイク」をやって話題になったことが、野党陣営によるイメージ戦術でほぼ唯一成功した最高の例ではなかったかと思う。

ちなみに、OWSで知られるようになった「人間マイク」は、韓国では「ソリトン」と呼ばれ、20年ほど前まで、韓国の学生運動などでは日常的に使われていた。「ソリトン! ソリトン! ソリトン!」という開始の掛け声は、おそらく学生運動の世代に訴える響きがあったのではないだろうか。一方、OWSで「人間マイク」を知った若い世代にとって、ソリトンはインターネットを通じて見るズコッティ公園のオキュパイを想起させ、新しい政治の息吹を感じさせたのではないだろうか。この映像はインターネットであっという間に拡散し、安哲秀の露出を極力控えていたテレビ局も、大型スピーカーがあっても、あえて「ソリトン」で訴えるという珍しい場面を紹介せざるを得なかったのだ。

■メディア


今回の大統領選挙でも、さまざまなメディアが活躍した。与党は主にテレビや新聞といったオールドメディアを、野党は主にインターネットのSNSやポッドキャストなどのニューメディアでそれぞれの支持者に呼びかけた。

もちろん放送は公共のメディアなので、本来は意図的に一方に有利な情報を流すことはできないのだが、与党は人事権を使い政権側の人物を経営陣に送り込んだり、番組内容への公開、非公開の圧力をかけたと言われる。最も露骨な形で現れたのがMBCだが、国営のKBSにも番組内容についてさまざまな「指示」があったと言われる。具体的な事例はいちいち紹介しないが、実際に番組を見れば、今回の大統領選挙での放送各社の態度がどのようなものだったのかは誰の目にも明らかだ。

韓国の新聞は、保守系の論調で知られる朝鮮・東亜・中央の三紙が全国的に圧倒的なシェアを維持している。リベラル系としては、ハンギョレ、京郷の二紙があるが、購読者数は少なく、ソウル首都圏が中心である。当然、朝鮮・東亜・中央は朴槿恵一色といってもいいほどだった。

韓国は世界でも有数のインターネット普及が進んだ国でユーザーも多いが、それでも大衆的な波及力はオールドメディアには及ばない。しかし野党陣営は、事実上、与党に握られたも同然の既存のマスコミよりも、インターネットでの活躍が目立った。

インターネットでは、OhMynewsのようなインターネット新聞をはじめ、ウェブの掲示板、TwitterやFacebookといったSNS、動画やネット放送(Podcast)などが文在寅や安哲秀に関するニュースの伝達に使われた。特に今年の選挙で目立ったのがネット放送だ。スマートフォンの普及で、動画や音声の視聴ができるようになり、特にPodcastは放送時間に縛られずに視聴できる。特に「ナコムス」のブレークで注目されたネットラジオ形式のPodcastは番組制作が容易で、「ながら聴取」ができるといった利便性が若年層にアピールした。また、放送局を解雇されたジャーナリストたちが発足させた「ニュース打破」はネットテレビ形式のPodcastで、そのまま地上波で流せるほどのクォリティを持つニュース番組だ。「ニュース打破」は、KBSやMBCのニュース番組が取り上げない重要なニュースを積極的に取り上げ、大きな反応を呼んだ。

今回の選挙では、主流メディアがあまり伝えない野党側の情報を求める多くの人々がインターネット・メディアで選挙に関する情報を得たり情報交換を行ったため、非常に活発に見えたが、テレビなどと異なりインターネット・メディアは能動的に情報を取得しなければならない。そのため、支持者向けの情報ツールとしてはともかく、支持者拡大のためのツールとしては限界があると言われている。

SNSなどの個人による情報発信も盛んだったが、選挙期間中に特定の候補への投票の呼びかけにつながる情報発信は禁止されている。そのため、野党支持者はSNSなどを使い投票を奨励するメッセージを拡散させることに力を注いだ。投票の棄権率が高い若年層には本来野党支持者が多いため、投票率の上昇は野党側に有利に作用するためだ。

このように新旧メディアに分かれて与野の情報戦が展開されたが、いかにインターネット先進国の韓国といえども、日夜、テレビや新聞で流される与党指向の組織的かつ大量の情報物量戦では、野党側の劣勢は明らかだった。

■韓国、これからの五年


大統領選挙が与党の勝利で終わり、韓国の進歩陣営は一様に沈み込んでいる。民主統合党を支持しなかった民主労総も、民主統合党には期待していないと大言壮語した左派も例外ではない。民主統合党は、信頼できる同志ではなかったとしても、少なくとも話は通じた。セヌリ党では話も通じない。

長く苦しい闘争を続けている多くの労働現場は、総選挙で野党が敗北した時もまだ大統領選挙があると信じて頑張ってきた。12月21日、昨年キム・ジンスク氏が長期間クレーンを占拠して闘った韓進重工影島造船所で「朴槿恵が大統領になってまた5年には耐えられない」という遺書を残して労組幹部が自殺した。限界に近い闘争を続けている多くの闘争現場の労働者も同じ気持ちだろう。

労働争議の現場ばかりではない。江汀の海軍基地反対闘争、密陽の原発送電塔反対闘争、サムソン電子との労災認定闘争など、多くの闘争の現場で闘っている人々にとって、大統領選挙での野党勝利は膠着した事態の突破口になるはずだった。

朴槿恵が大統領になることで、特に憂慮されるのは公営放送局、MBCの争議だ。李明博が送り込んだ経営陣により、国営のKBSや公営のMBCは明らかに政権のプロパガンダを垂れ流す道具になっている。それでも国営のKBSは支配構造が明確だが、朴槿恵と深い関係がある正修奨学会が大株主になっているMBCは、民営化の方向に進むのではないだろうか。その過程で、現在の争議はもちろん、戦闘的なMBC労組そのものが壊滅させられる可能性は無視できない。

朴槿恵は、民生重視を印象付けるために、いくつかの象徴的な争議で労組側に有利な介入が行われる可能性もなくはない。だが朴槿恵の労働政策の基本は、新自由主義的な労働柔軟化政策の枠組みを堅持した上で、セーフティネットを拡充し、生活の不安定化を救済するといった内容だ。現在、闘争を続けている労働者が満足できるような解決にはつながらないだろう。

むしろ朴槿恵は選挙で社会秩序の立て直しに肯定的な発言をしており、デモやストライキ、座り込みなどに対し、「社会秩序」を理由に厳しい対応に動く可能性も残る。

朴槿恵よりは文在寅に当選してほしかったというのは、進歩的な社会運動にかかわる多くの人々の本音だろう。しかし労働運動は、なぜ選挙の結果ごときでこれほど右往左往するようになってしまったのか…。

もちろん、選挙でやられたら昔のように路上でやり返せばいいというような単純な話ではないだろうが、厳しくなる闘争を支える方法や、反撃の方法はあるはずだし、なければ新しく開発すればいい。一人の中途半端な大統領を当選させることよりも、99%が力を合わせて社会を動かすことを考える方が、はるかに有益な結果を得られるに違いない。

当選の見込みはなくても韓国の左派が「労働者大統領候補」を立てたのは、ただの数合わせで権力の分け前を期待するのではなく、左派が目的とする労働者・民衆が主人公になる世の中では、当然、労働者が大統領になるはずだからだ。大統領選挙での勝利は、少なくとも左派にとって、目的ではなく、結果である。その意味では、バリバリの左派活動家にとって今回の大統領選挙での野党敗北は、ひとつのエピソードに過ぎないのかもしれない。

バリバリの左派は別として、現実的には次の選挙まで、韓国の社会運動は厳しい状況に置かれるだろう。これまで李明博の5年間、そしてこれからまた朴槿恵で5年間、同じような時間が続くというのは、日本人の私でさえ、考えただけで息苦しくなる。もっとも大半の日本人は、生まれた時から今の韓国のような時間が続いてきたのだが。

日本人の目から韓国の大統領選挙を見れば、「同じなんだなあ」と思わせられたり、「それは違う」と思ったりもする。同時に、韓国の選挙から、われわれは何が間違っていたのか、何をするべきなのかのヒントを読み取ることもできるのではないだろうか。

2012年10月30日火曜日

ArduinoにLCD表示器をつなぐ

Arduinoに秋月で500円で売ってるLCDキャラクタディスプレイをつなげてみた。
素直に4ビットで配線すれば、IDEのLiquidCrystalライブラリでそのまま表示できる。

しかしこれでは表示制御のために6本のピンが必要で、何だか無駄だ。シフトレジスタを使えばもっと少ない信号線で制御できると思って、ちょっとGoogleを検索すると、みんな同じ事を考えるようで、すでにちゃんと動作する配線方法と、そのためのライブラリまで存在する。

このシフトレジスタを使った制御方法だと3本、抵抗とダイオードを追加すれば2本、さらに工夫すればたった1本でLCDの表示を制御することもできる。しかも、4ビットでつなぐよりも、表示速度がずっと早い。

とりあえず先日、LEDの点灯にでも使おうかと思って買っておいた74595があったので、 これで3線接続と2線接続を試してみたけど、結果としてちゃんと表示させることができた。
ちょっとひっかかったのは、2本で制御する場合で、ANDゲートを入れるか、抵抗とダイオードでダイオードロジックを組まなければいけないのだが、ダイオードによってはうまくタイミングが取れないことがある。サイトのディスカッションによれば、接合容量が小さくないとダメとのこと。抵抗は、マイコン側ポートがHighで、シフトレジスタ側の出力がLowの時に、シフトレジスタ側に流れてしまう電流を制限する。ここで抵抗とダイオードの接合容量がローパスフィルタになっちゃうので、抵抗はできるだけ小さく、ダイオードの接合容量もできるだけ小さくないと、LCDのEnableのタイミングがずれてしまうということなんだと思う。
部品箱の中に転がってるダイオードの品番なんてわからないので、適当に付けてみたら、最初のトライでは表示が乱れたので、別のダイオードに変えたらオッケーでした。たった2本でつながるのはうれしい。
ただし、2線接続の場合、やや不安定。74595を使うんだったら3線接続の方が確実。2線接続をしたいんだったら74164を使うほうが安定していると思う(けど、似たようなものかもしれない)。上記のEnableのタイミングが乱れるんじゃないかと思う。ブレッドボードなんかを使ってると、シフトレジスタのVccとGND間のパスコンを入れなかったりとか、無意味に長い線で配線したりとか、つい不精してしまうのだけど、ちゃんと気を使ったほうがいいみたい。

なお、New Liquid Crystalライブラリは、標準のLiquidCrystalライブラリの上位互換で、そのうち、Arduino IDEの標準ライブラリになる予定だそうだ。
つまり従来通り、4ビットでつなぐときはそのままNew LiquidCrystalの4bitモードでつなげられる。
2wireと3wireを使いたい場合は、LCD.h(Wire.h?)とLiquidCrysatl_SR.hをインクルードして、LiquidCrystal_SRのインスタンスを作ればいい。

2線接続の場合
#include <LCD.h>
#include <LiquidCrystal_SR.h>

LiquidCrystal_SR lcd(2,3,TWO_WIRE); // data, clockのポートを指定

3線接続の場合
#include <LCD.h>
#include <LiquidCrystal_SR.h>

LiquidCrystal_SR lcd(2,3,4); // data, clock, enableのポートを指定

ただ、現時点(2012/10)段階では、まだこのライブラリは活発な開発が続いているのでいろいろ細かい問題もある。たとえば標準のCustomCharacterだとwriteの型についてのエラーが出る。Arduinoのコアで定義されているwrite(char*)とNewLiquidCrystalのwrite(uint8_t)が異なるのが問題らしいのだけど、ここは強引にwrite((unit8_t)0)みたいにuint8_tなどでキャストしてしまえばコンパイルは通る。ただコンパイルは通っても、なんかおかしい。
あと、NewLiquidCrystalライブラリの例にあるperformanceLCDでもエラーが出てコンパイルできない。これはArduino 1.0.1のバグなのでArduinoのライブラリにパッチを当てる。